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【プロ解説】「岸田NISA(新NISA)」の最適解・基本運用戦略を解説

最終更新日 2023/04/18

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執筆者:元証券マン・ミスターF澤   

 2024年から、新しいNISA(少額投資非課税制度)が始まります。各所から絶賛の声も聞かれていますが、一方でまだ「どんな制度?」「何が変わるの?」「どうやって運用すればいいの?」などの疑問を抱えている方も多いでしょう。今回は、ネット上では「岸田NISA 」なる愛称でも呼ばれ始めている、この新しいNISA制度について、元ベテラン証券マンの著者が、できるだけわかりやすく解説していきます。


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「岸田NISA」の基本戦略は?どう向き合う?

岸田NISAの運用戦略は?「岸田NISA」の素晴らしい点と注意点を説明 したところで、次に具体的な向き合い方、基本戦略について解説していきましょう。

基本戦略1.「つみたて枠」をベースに考える

「岸田NISA」との最適な向き合い方は開始年齢によっても変わってきます。ただ、「老後の資産づくりにフォーカスした制度」と仮定すると、政府のもっとも意図するところは比較的若い層の利用拡大でしょう。

投資できる時間にまだまだ余裕のある20〜40代くらいの世代であれば、長期投資によって“時間を味方につける”ことで、投資効果を最大化することができます。その意味でもまずベースになるのは「つみたて枠」を使った積立投資 です。

毎月決まった額の投資信託を定期預金のように積み立てていく積立投資は、投資初心者にはベストな投資方法です。一度銘柄を選んでしまえば、その後は細かな値動きに一喜一憂せずに済みますし、長期投資なら複利効果 による利益の恩恵も受けられます。

【F澤のワンポイントメモ】
「複利効果」とは、運用で得た利益を再度投資に回すことで、その利益にさらに利息が乗り、それが繰り返されることで資産全体の利益が膨らんでいく効果のことをいいます。例えば、月3万円を50年間積み立てる場合、貯金だと1,800万円のままですが、これを平均4%で運用できたと仮定すると50年後には5,700万円を超える 資産になります。

「つみたて枠」で何を買えばいい?

そして肝心の「何を買えばよいか」ですが、これは現状、米国株式に投資するインデックスファンド (投資信託)が最適解 だと思っています。アメリカの代表的な株価指数である「S&P500」は、算出が開始された1957年以来、多少の下落場面はあれど、大勢で見ると一貫して右肩上がりのチャートを示してきました。

日本の経済が停滞する中でも安定的な成長を見せており、もちろん絶対はありませんが、その傾向が今後も続く可能性は高いでしょう。そういった意味で、初心者でも簡単かつ確度高く資産を運用できる商品として、米国株式のインデックスファンドをオススメします。米国株式インデックスファンドであれば平均4〜5%の年利が期待できます。

また、アメリカに限らず投資先地域の分散を効かせたい場合は、日本や欧州、さらに中国やインドなどの新興国にも投資する全世界株式のインデックスファンドを買うのもよいでしょう。

基本戦略2.無理をしない

「岸田NISA」では、年間投資枠360万円のうち120万円分がつみたて枠、240万円分が成長投資枠となりますが、360万円すべてをつみたて枠として使うこともできます(成長投資枠は240万円が限度)。つまり、最大30万円/月を積み立てることが可能です。

ただし、これはあくまで最大の額です。使い切らなかったとしても、旧NISAのように投資枠が消えていくことはありません から、無理をせず余裕を持った投資計画を立てましょう。家計に関して言えば、無駄な支出をスリム化するのはもちろん効果的ですが、投資のために必要な支出まで無理に削って資金を捻出する、あるいは生活に必要な貯金までを投資に回す、というようなことまでするのは、まったくおすすめしません。

基本戦略3.シニア層は成長投資枠の活用を検討

1、2に関しては、40代以下の長期運用を前提とした考え方を紹介しましたが、50代以上のシニア層のケースも考えてみましょう。

日本人の平均年齢は男女ともに80歳を超えていますから、仮に60歳からでも長期投資をする意味は十分にあります 。とはいえ、「体が元気なうちに投資で収益を上げたい」という方もいらっしゃるでしょう。

そのような場合は、つみたて枠をベースにしつつ、成長投資枠も活用して個別株、とくに安定的に高利回りの配当がもらえる高配当株に分散投資するのもアリでしょう。例えば、配当利回り5%の株式に投資した場合、100万円分を運用すれば年間で5万円の不労所得が自動的に入ってくる計算になります。NISAであれば、この配当金も非課税なので税制メリットも享受できます。

基本戦略4.すでに資産を持っている人は移し替えも視野に

すでに株式や投資信託などの資産を課税口座で運用している人も多いでしょう。こうしたケースでも「岸田NISA」を活用する意義は大いにあります。その代表的なものが資産の移し替えです。

先述のように、株式の配当金についてもNISA口座であれば非課税で受け取れるため、課税口座の資産を一旦売却してNISAの枠で買い直す(資産を移し替える)だけでも大きなメリットがあります。長期投資を前提とした投資信託を持っている場合も基本的には同様です。

長期保有して資産が増えていけば(利益の幅が増えれば)、そのぶんだけ売却時の税金も増えていきます。その意味では、とくに成長株や米国株式のインデックス投信など、キャピタルゲイン(売却益)を狙うような資産を保有している場合は、タイミングを測りつつ早めに移し替えるのが税制的に得策 です。

基本戦略5.資金が必要なときは売却してもOK

そして、「岸田NISA」の大きな特徴として、NISA口座を預金口座のように使えるようになったことが挙げられます。資産を売却すればそのぶんの投資枠が復活するので、購入⇔売却が柔軟に行えるようになりました。これは「銀行口座への預け入れ⇔引き出し」に近く 、資産運用をしながら必要なときに必要なぶんだけ「お金を下ろすように」売却して使う、ということも可能です。

長い人生、何が起こるかわかりません。急に大きなお金が必要になることもあるでしょう。そんなときは投資をお休みしても問題ありません。というより、そのようなときのためにこそ、有効活用すべき制度でもあるのです。

そもそも理解しておきたい「リスク」の話

投資のリスクそして、今回取り上げた「岸田NISA」に限らず投資全般に言えることがあります。それは「投資にはリスクがつきものである」ということ。言い換えれば、「儲かる可能性もあるし、損をする可能性もある」ということです。

必ず儲かる投資はない

「うまい話には裏がある」と言いますが、「必ず儲かる投資話」はその最たるものでしょう。必ず儲かる投資は存在しません (銀行預金は超ローリスク・超ローリターンの投資、と言えなくもないですが、それですら絶対ではありません)。もしそのような文句を見聞きしたとしたら、それは投資ではなく詐欺であると心得ておくべきです。

よくわからないものに投資しない

上の項にも通じる話ですが、実態のよくわからないものには投資すべきではありません。投資初心者にありがちなのが、「雑誌に書いてあったから」「SNSで〇〇さんが良いと言っていたから」などの理由で買う銘柄を決めてしまうケースです。

仮想通貨バブルなどは代表的な例と言えそうですが、中には周りの情報に踊らされて、自分でもよくわかっていないものに投資をして大損をする、ということを経験したことのある人もいるかもしれません。そういったことのないように、最低限どんなものに投資しているのか理解するよう心がけましょう。

投資は自己責任

上記をすべて踏まえた上で「投資は自己責任である」と認識しておきましょう。詐欺的な儲け話に耳を傾けて損をしても誰も助けてはくれません。最終的に「乗る」と判断した自分の責任だからです。だからこそ投資のリスクを理解し、判断力を身につけていく必要があります。

NISAは投資の入り口として最適な制度です。もしかしたら、運用していく上で「あれ?あんまり儲からないな」と思うことがあるかも知れません。でも、案外そんなものなのです。そうした「基準」を知ることも、リスクを理解する手助けになります。

「岸田NISA」を有効活用して将来の資産づくりを

NISAでライフプランを描く2024年からスタートする「岸田NISA」の概要や運用方針について細かく解説 いたしました。最後に、「持っておくとよりよい心構え」として1点付け足させていただこうと思います。それは「資産運用の目的を考え、ゴールから逆算してプランニングする」ということです。
  • なんのために資産をつくるのか
  • いくら必要なのか
  • いつまでに必要なのか
このようなことをある程度思い描けていると、プランニングしやすくなりますし、何より目標が明確になることで楽しく投資に向き合えるようにもなります。もちろん、最初から明確な目標は必要はありません。まずは証券会社などが提供している資産運用シミュレーションなどで、「毎月〇〇万円を投資に回すと〇〇年後にいくらになる」というのを算出してみて、金額のイメージを掴んでみるのもよいかもしれません。

 いずれにしても、「岸田NISA」は現行NISAと比較して圧倒的に使い勝手がよくなる“神制度”ですので、ぜひじょうずに活用して、将来の資産づくりに役立ててみてください。


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【前編】大幅に使い勝手が向上した「岸田NISA」のメリットとは?

※当記事は2023年2月17日時点の情報をもとに作成しております

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記事を書いた人 元証券マン・ミスターF澤
メガバンク系証券会社に32年勤務。支店長、コンプラ部門を歴任。コンプラ部門ではマネーローンダリング対策を専門とし、FATF対応にも従事。暗号資産会社取締役を経て現在株式会社LBIコンプライアンス部長。
記事を書いた人 元証券マン・ミスターF澤
メガバンク系証券会社に32年勤務。支店長、コンプラ部門を歴任。コンプラ部門ではマネーローンダリング対策を専門とし、FATF対応にも従事。暗号資産会社取締役を経て現在株式会社LBIコンプライアンス部長。
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