山﨑 裕佳子
CFP®認定者。通関士として通関業務に7年携わった後、メーカーにて海外営業事務、銀行にてテラーほか様々な仕事を経験。2019年、2級FP技能士、AFP資格を取得。その後、独立系FP会社で執筆・校正の経験を積みフリーランスとして活動を始める。2022年5月、FP事務所MIRAI設立。
山﨑 裕佳子
CFP®認定者。通関士として通関業務に7年携わった後、メーカーにて海外営業事務、銀行にてテラーほか様々な仕事を経験。2019年、2級FP技能士、AFP資格を取得。その後、独立系FP会社で執筆・校正の経験を積みフリーランスとして活動を始める。2022年5月、FP事務所MIRAI設立。

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不動産クラウドファンディングの選び方を6つのポイントで解説!
不動産クラウドファンディング は、少額から不動産投資ができること、運用に手間がかからないことなどから、資産運用の選択肢として人気が高まっている投資の一つです。 しかし、不動産クラウドファンディングを行う事業者はさまざま存在するため、どの事業者をどういった基準で選べばいいのかという悩みもあるかと思います。 そこで今回は、不動産クラウドファンディングの事業者の選び方 をテーマに、そもそも不動産クラウドファンディングとは何かという概要からメリット・デメリットまで詳しく解説します。 そもそも不動産クラウドファンディングとは 不動産クラウドファンディングは、1口1万円からの少額投資が可能という手軽さと、預貯金に比べ利回りが高く、インターネット上で取引が完結することから資金の運用先として、昨今、注目度の高い投資です。不動産クラウドファンディングの仕組みを簡単に説明すると、以下の1から3までの流れになります。 事業者が、不動産権利を小口化して複数の投資家から資金を集める 集まった資金で不動産を購入、運用 収益を投資家へ分配 投資家は事業者のHPから投資したいファンドを見つけて、募集期間内にクラウドファンディングに参加します。ファンドは先着順のものと、抽選のものがあります。投資先となる物件は、住居用不動産、商業施設、医療施設、保育施設など、さまざまな種類があります。海外の物件へのクラウドファンディングもあります。 当然、投資ですので 元本保証 はありません。リスクをよく理解して始めましょう。 不動産クラウドファンディングの選び方6つのポイント 不動産クラウドファンディングをはじめるための 一歩は、運営事業者を選ぶことから始まります。しかし、数ある事業者や多数のファンドから、何を基準に選べばいいのでしょうか? ここでは、事業者やファンドを選ぶための6つのポイントをお伝えします。 1.取り扱いファンドの数 不動産クラウドファンディングに参加するためには、事業者のサイトから申し込みをします。ファンドによって「先着順」で参加できるものや、「抽選」のものがあります。人気の高い先着順のファンドでは開始からすぐに募集が終了してしまうこともあります。 そのため、ファンドの募集規模が小さい、または、ファンドの取り扱い数が少ない事業者では、なかなかクラウドファンディングに参加できないこともあります。 よって、事業者のサイトを選ぶ際は、ファンドの取り扱いの多い業者、また、募集金額の大きい業者がおすすめです。事前にリサーチして、数社に登録しておくのがいいでしょう。 2.不動産の種類や情報量 不動産クラウドファンディングの投資先は、住居用不動産、商業施設、ホテル・旅館などの宿泊施設、保育施設など、多種多様です。ファンドを選ぶときには、利回りだけでなく、投資物件の種類や立地なども重要な判断基準となります。 例えば、住居系不動産の場合、定期的に家賃収入が見込まれるため、比較的安定した分配金(インカムゲイン)が得られます。また、利便性の高い土地や人気のエリアなら、売却益(キャピタルゲイン)も見込めるでしょう。 一方、商業施設や宿泊施設などの場合、世の中の景気や社会情勢により収益が変動する可能性があります。また、海外不動産に投資できるクラウドファンディングは、一般的に利回りが高く魅力的に見えますが、為替変動の影響を受ける場合があるので注意が必要です。 不動産クラウドファンディングは、数あるファンドの中から自分で投資先を選ぶという楽しみはありますが、同じ利回りでも、選ぶファンドによって抱えるリスクが異なることを理解しておきましょう。ファンドを選ぶ際は、自分のリスク許容度と相談して投資先を選ぶことが大切です。 3.運用期間 不動産クラウドファンディングの運用期間は、3カ月から12カ月など、比較的短期間のものが多いですが、中には2年、3年、10年という長期運用のファンドもあります。 短期運用は、資金が早期に回収できるため、景気の影響を受けにくいことがメリットです。 一方、長期運用は、長期間資金を拘束することになるため、利回りが短期運用より高めに設定されていることがメリットと言えます。したがって、将来的な資金計画の中で、自分に適した投資期間を選ぶようにしましょう。 4.優先劣後割合 優先劣後出資とは、投資家の損失リスクを抑える方式です。ファンドに対して、投資家が優先出資を行い、事業者が劣後出資を行うという仕組みです。 優先劣後出資方式をとっているファンドの場合、対象不動産の価値が下落して損失が出た場合、その損失は最初に劣後出資者の事業者が負担することになります。したがって、損失が事業者の劣後出資額を超えなければ、優先出資者である投資家の元本が減ることはありません。 例えば、優先劣後割合が、「70%:30%」の出資総額1億円の不動産の場合で考えてみましょう。 投資家の優先出資金:7,000万円 事業者の劣後出資金:3,000万円 仮にこの物件で2,000万円の損失が出た場合でも、劣後出資者である事業者の出資金から2,000万円が補填されるため、投資家の損失はありません。もし、損失が劣後出資額を超えてしまうと、優先出資者の元本にも影響が生じます。 なお、優先劣後出資方式では、分配金の配当順位も優先出資者→劣後出資者の順です。このように、優先劣後出資方式は、投資家の安全性を高める仕組みです。優先出資率と劣後出資率の割合はファンドによって異なりますので、ファンド選びの指標にできます。 5.事業者の信頼性 不動産クラウドファンディングの事業者を選ぶ際は、必ず、不動産特定共同事業 の許可を受けている会社を選んでください。不動産特定共同事業の許可を得るためには、資本金、財産的基礎、人的構成、電子取引業務の体制整備ほか、定められた要件を満たしている必要があります。 出典:国土交通省|不動産特定共同事業の許可の要件 大切な財産を守るために業者選びは重要です。もちろん、許可を受けているから100%大丈夫という保証はありませんが、会社規模、不動産業歴、不動産クラウドファンディングの過去の実績などを調べ、信頼性の高い運営会社を選ぶことが大切です。 6.投資家へのサポート体制 不動産クラウドファンディングは、インターネットで完結する投資です。事前に会員登録をしておけば、PCやスマホから簡単に投資ができます。しかし、取引手数料や、中途解約が可能かなど、事業者によりサービスやサポートに違いがあります。 信頼性の高い事業者同士を比較検討することが大切です。 ほかの不動産投資法との違いは? 不動産投資 と言えば、現物不動産への投資やREIT(不動産投資信託) やソーシャルレンディング あります。これらの投資商品と、不動産クラウドファンディングの違いを見ていきましょう。 1.現物不動産投資との違い 現物不動産 への投資先と言えば、アパートやマンションなどの住居系不動産が多いため、オーナーの収益は家賃や譲渡益になります。 現物不動産投資は、安定的な収益が見込まれる一方で、不動産取得時の費用が多額であることや、税金や管理費などのランニングコストなどがかかることから、誰もが気軽に手を出せる投資ではありません。 一方、不動産クラウドファンディングは、不動産投資といっても、権利を小口化しているため、少額から不動産への投資が可能です。無理のない範囲で投資ができるため、投資初心者でも手を出しやすいと言えます。 また、現物不動産を運用するには、管理や運営にマンパワーが必要ですが、不動産クラウドファンディングでは、運用が始まれば基本、償還まで手間がかかりません。 2.REIT(不動産投資信託)との違い REIT とは、不動産投資信託証券のことです。複数の投資家から集めた資金を投資のプロが、商業ビル、オフィスビル、マンションなど複数の不動産を購入して運用します。一つの不動産ではなく、複数へ投資するためリスクの分散にもなっています。 REITは不動産クラウドファンディング同様、少額からの投資が可能です。投資信託のためいつでも売却可能で売却益を狙うこともできますが、安定的に分配金を受け取るためには長期保有が基本です。また、REITは、証券取引所で売買をしますので、不動産クラウドファンディングよりも流動性が高いです。その半面、社会情勢や為替の影響を受けやすいため、REIT自体の価格や分配金に変動リスクがあります。 その点、不動産クラウドファンディングは、あらかじめ運用期間や利回りが決まっているので収益の安定性は高いと言えます。 3.ソーシャルレンディングとの違い 貸付型(融資型)クラウドファンディングのことを、ソーシャルレンディング といいます。ソーシャルレンディングは、インターネットでファンドの募集を行い、複数の投資家から集めた資金を、ソーシャルレンディング会社(事業者)が企業に貸し付けることで利息を受け取り、投資家へ分配するサービスです。 不動産クラウドファンディングと同様、少額からの投資が可能で、こちらも今、注目されている投資方法の一つです。不動産クラウドファンディングとの大きな違いは、不動産クラウドファンディングは特定の不動産に直接投資するのに対し、ソーシャルレンディングは、直接投資するのではなく、間にソーシャルレンディング会社(事業者)が入り融資を行う点です。 ソーシャルレンディングでは、融資先企業の収益が悪化すると分配金が減る可能性があるのと同時に、ソーシャルレンディング会社(事業者)が倒産してしまうと、出資金が戻らなくなるケースもあります。 このようなことから利回りは高めの設定ですが、投資を行う際は事業者の経営状況などを注意深く確認する必要があります。 不動産クラウドファンディングのメリット・デメリット 次に、不動産クラウドファンディングのメリットとデメリットを確認していきましょう。 不動産クラウドファンディングのメリット4つ メリット1.少額から不動産投資ができる 不動産クラウドファンディングは、1口1万円からという少額から始められ、運用期間も短期・中期・長期と選べるため、自分に合うスタイルで比較的気軽に投資が始められます。 メリット2.ミドルリスク・ミドルリターンの投資 定期預金をローリスク・ローリターン、FXや暗号資産をハイリスク・ハイリターンとしたら、不動産クラウドファンディングは、ミドルリスク・ミドルリターンを目指した投資です。 ローリターンでは物足りない、かと言ってハイリスクには踏み込めないという方には向いているのではないでしょうか。 運用期間や利回りはファンドによって異なります。将来の資金計画、リスク許容度内のファンドを選ぶことができます。 メリット3.管理や運用の手間がかからない 不動産クラウドファンディングは、クラウドファンディングに参加できれば、運用が終了して分配金を受け取るまで何もする必要はありません。手間なしの投資と言えます。 メリット4.安定収入 株式、投資信託、REITなど他の投資は、社会情勢や為替変動により元本や分配金に変動が生じますが、不動産クラウドファンディングは、保証はないものの、設定された利回りで比較的安定した収入が期待できます。 不動産クラウドファンディングのデメリット4つ デメリット1.分配金が変動する可能性 不動産クラウドファンディングの利回りは、5%~7%と他の投資に比べ高めの設定です。しかし、事業者の倒産、社会情勢、さまざまな要因で予定通りの分配金を得られないリスクはゼロではありません。 デメリット2.中途解約できない場合もある 不動産クラウドファンディングの利回りは償還まで保有した場合の利回りです。投資を始める前には、運用期間や投資額が適切かを検討しましょう。中途解約可能としている事業者もありますが、別途、事務手数料がかかるため運用効率は下がります。 デメリット3.元本割れリスク 不動産クラウドファンディングは投資ですので、元本割れのリスクはゼロではありません。投資不動産の価値が下がると、元本割れの可能性があります。元本割れリスクを下げるために、優先劣後出資方式を採用しているファンドを選ぶようにしましょう。出資割合はファンドごとに異なりますので、劣後出資割合が高いファンドを選ぶこともリスクを下げるコツです。 デメリット4.希望のファンドに投資できないこともある 不動産クラウドファンディングの参加方法は、「先着順」と「抽選」がありますが、先着順で人気の高いファンドは、募集開始後すぐに終了してしまうことがあります。確実にクラウドファンディングに参加したい場合は、「先着順」と「抽選」を併用する、数社の事業者に会員登録をしておくなどの準備が必要です。 不動産クラウドファンディングは事業者とファンド選びが重要 今回は、不動産クラウドファンディングの選び方 について解説しました。 不動産クラウドファンディングは、少額から不動産投資ができること、手間もかからないことから忙しい方に向いているミドルリスク・ミドルリターンの投資です。まずは、信頼できる事業者選びから始めましょう。確実にクラウドファンディングに参加するためには、数社に登録することも検討していいでしょう。そして、リスク軽減のために、優先劣後割合を確認することも大切です。 今後の資産運用先の一つとして不動産クラウドファンディングも視野に入れてみてはいかがでしょうか。
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2022/12/09
#投資の始め方 #不動産特定共同事業法(不特法) #少額投資
ソーシャルレンディングは確定申告が必要?不要なケースや節税方法を紹介
ソーシャルレンディング の分配金は源泉徴収の対象であるため、税引き後の金額が投資家の利益となります。税率は20.42%(所得税20%+復興税0.42%)です。 一見、課税関係は終了しているように見えますが、原則、ソーシャルレンディングの分配金を受け取った場合には確定申告が必要です。 ただし、例外的に確定申告不要なケース、不要だけれど申告したほうがお得になるケースがあります。  そこで本記事では、ソーシャルレンディングの税金と確定申告 について詳しく解説します。 ソーシャルレンディングには確定申告が必要? ソーシャルレンディングの分配金に対しては、基本的に源泉徴収が行われるため、特に確定申告は不要であるように思えます。なぜ、ソーシャルレンディングには確定申告が必要になるのでしょうか。 ソーシャルレンディングに確定申告が必要な理由 ソーシャルレンディング投資の収益は、「雑所得」に分類されます。所得税の課税方式は、「総合課税」と「分離課税」の2種類があり、雑所得を含む総合課税に該当する所得については、その収入金額のすべてを合算して所得税を計算するという決まりがあります。 ソーシャルレンディングの分配金も雑所得であるため、ほかの総合課税の所得(例:給与所得、不動産所得など)と合算して、所得税を再計算しなければなりません。そのために確定申告が必要なのです。なお、確定申告することで、ソーシャルレンディングの分配金の受取時に徴収された20.42%の税金の過不足が精算されることになります。 以下の1~4に当てはまる人は、原則、確定申告が必要なので忘れずに申告しましょう。 1.給与所得者で雑所得が年間20万円を超える会社員などの給与所得者で、ソーシャルレンディング投資の所得が年間20万円を超える場合は確定申告が必要です。ちなみに、会社員の方の副業収入も雑所得ですので、同様に副業所得が20万円を超えると確定申告をしなければなりません。 2.2ヵ所以上から給与をもらっていて、他の所得が20万円以上ある複数から受けている給与のすべてが源泉徴収対象である場合で、年末調整されていない収入と、ソーシャルレンディング投資を含む雑所得との合計額が20万円を超える場合は確定申告が必要です。ただし、給与合算額から、所得控除額(*)を差し引いた残りの額が150万円以下で、さらにソーシャルレンディングを含む雑所得の合計が20万円以下の場合は申告不要です。(*)雑損控除、医療費控除、寄附金控除、基礎控除は除く 3.給与収入が年間2,000万円を超える年収が2,000万円を超える給与所得者は、会社の年末調整ではなく自分で確定申告をして所得税を納めることになっています。確定申告をする場合は、ソーシャルレンディング投資の収益の多寡にかかわらず、すべてを申告しなければなりません。 4.個人事業主としての所得が48万円以上個人事業主は、給与所得控除の適用がないため、ソーシャルレンディング投資の所得も含めた年間所得が、基礎控除額である48万円を超えると確定申告が必要です。また、無職の主婦(夫)や学生も同様にソーシャルレンディング投資による収益が基礎控除額である48万円を超えれば課税対象になります。  参照:国税庁|確定申告が必要な方 ソーシャルレンディングの確定申告が不要なケースは?一方、確定申告が不要なケースもあります。確定申告が必要な人の裏返しになりますが、給与所得者は20万円、自営業者や専業主婦(夫)などは48万円という数字がキーです。 確定申告が不要なのはどんな人?会社員の方で、所得が会社からの給与とソーシャルレンディングの収益だけの場合、分配金が20万円以下であれば確定申告は不要です。また、個人事業主や、無職の方は、ソーシャルレンディング投資からの収益も合わせた年間所得の合計額が48万円以下であれば、確定申告不要です。 確定申告が不要な場合でも申告すれば還付を受けられることも確定申告が不要なケースでも、あえて確定申告をすることで税金の還付を受けられる場合があります。ソーシャルレンディングでは、分配金から20.42%の所得税がすでに控除されています。所得税は累進課税方式であるため、所得額に比例して税率が上がる仕組みです。 仮に所得税額が5%の方が、20.42%の税金を払っていたら、税金を払いすぎていることになります。課税所得が195万円未満であれば、所得税率は5%、住民税10%の合計15%の税金を払えばよいことになりますので、確定申告すれば約5%相当の金額が還付されます。 【注意】住民税の申告を忘れずに!ソーシャルレンディング投資の分配金から徴収されているのは所得税のみで住民税は引かれていません。住民税は、別途申告する必要があるのです。ただし、確定申告を行った場合は、そのデータが市区町村へ送信され自動で住民税の計算がされるため、住民税だけの申告は不要です。別途、住民税だけの申告が必要なのは、確定申告をしないケースに限ります。 ソーシャルレンディングの確定申告をしなかった場合はどうなる? 確定申告すべきケースで、正しい申告を行わないとペナルティの対象となりますので注意しましょう。期限までに申告しない、または、申告はしても、納期限までに税金を払わないなどの場合、以下のようなペナルティが課されます。 無申告加算税納付すべき税金があるにもかかわらず、確定申告書を申告期限までに提出しなかった場合に課されます。ペナルティとしては、納付すべき税金が50万円以下の場合15%、50万円以上では20%の課税です。なお、税務署から指摘される前に自主納付すれば5%へ減額措置があります。 延滞税法定納期限までに税金を納めない場合に課されます。ペナルティは、納期限の翌日から2ケ月以内であれば原則、年7.3%、2ケ月経過後は、原則、年14.6%の課税です。(令和3年1月1日以後の割合) ソーシャルレンディング投資の分配金については、事業者から税務署へ「支払調書」が提出されているため、所得をごまかすことはできません。加算税や延滞税という余分な支払いを回避するためにも、正しい申告納税を心掛けましょう。  参照:国税庁|No.9205 延滞税について   参照:国税庁|No.2024 確定申告を忘れたとき ソーシャルレンディングの確定申告をする際の注意点次に、ソーシャルレンディングの確定申告をする際の注意点を見ていきましょう。 「損益通算」や「損失の繰り越し控除」はできない例えば、「給与所得」と「不動産所得」、「給与所得」と「事業所得」などは損益通算が可能です。不動産所得や、事業所得の損失を給与所得から相殺できれば、所得税の軽減につながります。しかし、ソーシャルレンディング投資で損失が出た場合でも、ほかの所得と「損益通算」ができません。 ソーシャルレンディング投資で 損失が出た場合には、ほかの所得と相殺できないことを覚えておきましょう。 また、ソーシャルレンディング投資では、損失を翌年以降に繰越すこともできません。例えば、株式投資では、譲渡損失が発生し、損益通算してもなお損失が残る場合に、損失を3年間繰り越し控除することができます。 同じ投資による所得でも、ソーシャルレンディングは雑所得扱いであるため、融通が利きにくい投資であることを頭の片隅に置いておきましょう。 確定申告時は経費計上も忘れずに行おうソーシャルレンディング投資の収益は雑所得であるとお伝えしていますが、雑所得とは雑収入から必要経費を差し引いた金額です。 雑所得 = 雑収入 - 必要経費 ソーシャルレンディング投資も、必要経費とできるものがあります。関連図書費、口座振替手数料、通信費の一部などが考えられます。ソーシャルレンディングの必要経費の額はそれほど大きくないかもしれませんが、雑所得を減額できれば多少の節税効果はあるかもしれません。 ソーシャルレンディングの確定申告方法【4ステップ】確定申告期間は、例年2月16日から3月15日です。直前になって慌てることのないよう早めに準備を始めましょう。ソーシャルレンディングの確定申告はおおむね次の流れで行います。 Step1.確定申告に必要な書類を集める確定申告には、以下の書類が必要になります。 マイナンバーカード(または、マイナンバー通知カード) 源泉徴収票 ソーシャルレンディングの分配金がわかる書類(年間取引報告書など) 必要経費の領収書 預貯金口座番号(還付を受ける人) Step2.確定申告書を作成するソーシャルレンディング投資をしている方であれば、e-Taxを利用して申告書を作成するのが簡単です。国税庁HPの確定申告書等作成コーナー にて、案内に従って数字を入力するだけで、税額が自動計算されるため計算間違いが起こりません。2023年1月より(2022年申告分)、マイナンバーカードやスマホを利用した手続きの利便性がさらに向上します。ネット環境があり、PC操作ができるソーシャルレンディングの投資家には、ネット申告が適しているでしょう。  参照:国税庁|国税庁のホームページで所得税等の申告書等作成・e-Taxがますます便利に! Step3.確定申告書を提出するe-Taxを利用すれば、確定申告書をそのまま送信できます。また、申告書は出力後、税務署へ郵送、持参することも可能です。 Step4.税金を納付する次のいずれかの方法で納税します。 口座振替 クレジットカード 現金(金融機関窓口、コンビニ) 口座振替納税の場合、事前に届出書が必要です。e-Taxを利用した電子納税手続きの場合、申告書作成→提出→納税(口座振替)までがスムーズです。ただし、電子納税では領収書の発行がありませんので、領収書が必要な方は、納付書を持参して窓口で納税をしてください。 ソーシャルレンディング投資の分配金は正しく確定申告 今回は、ソーシャルレンディングの税金と確定申告 について詳しく解説しました。 ソーシャルレンディングの分配金は雑所得に区分されるため、一部の例外を除き、ほかの総合課税の所得と合算して所得税の再計算を行い、確定申告により納税額の過不足を精算しなければなりません。確定申告が必要であるにもかかわらず、申告を怠ると加算税や延滞税の対象となることもありますので注意しましょう。 ソーシャルレンディング投資からの収益は、ほかの9つの所得区分と損益通算ができず、損失の繰り越しもできません。しかし、経費をきっちり計上すること、または、家族内で所得税率の低い方が投資を行うなどの工夫で、税金を軽減する余地はあります。いずれにしても、ソーシャルレンディングの税金の仕組みをしっかり理解し、正しい申告をすることが大切です。
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2022/07/24
#税金・節税 #少額投資
ソーシャルレンディングとは?仕組みやメリット・デメリットを徹底解説
ソーシャルレンディング は、高い利回りや少額から投資が可能であること、インターネットで取引ができるという手軽さもあり、投資初心者にも注目されています。反面、投資には必ずリスクがあることから、場合によっては、元本割れや貸倒れにより大切な資産を失う可能性もあり得ます。しかし、投資は、正しく理解すればリスクを軽減することができます。 そこで本記事では、ソーシャルレンディングとは という基本から、メリット・デメリット、投資の始め方などを解説します。これからソーシャルレンディングを始めようかと検討している方は、ぜひ参考にしてください。  そもそもソーシャルレンディングとは? ソーシャルレンディングとは、「資金を調達したい企業」と「資産運用したい投資家」をインターネット上でつなぐサービス です。投資家は、自己資金を貸すことで利子を受け取れますし、企業側は銀行など金融機関から融資を受けなくても資金の調達ができます。企業と投資家をつなぐ役目は、ソーシャルレンディング事業者が担います。 投資家の利益は、融資先企業から支払われる利子です。運用期間中、定期的に分配金を受け取り、運用終了後には元本が戻ります。 なお、仲介するソーシャルレンディング事業者は、投資家から資金を募るという金融サービスを提供するため「第二種金融商品取引業」と、企業へ集めた資金を融資する「貸金業」の両方の登録が必要です。  ソーシャルレンディングが注目される理由ソーシャルレンディングは、「資金を借りたい企業側」と「利回りの高い資産運用をしたい投資家」の双方のニーズを満たすサービスと言えます。 例えば、立ち上げ間もない企業では、金融機関から融資を受けることが難しい場合があります。しかし、ソーシャルレンディングを利用することで、柔軟な資金調達ができます。また、投資家は少額から預貯金などより高い金利で資産運用ができます。 加えて、インターネット上で取引可能で、出資さえすれば償還まで値動きのチェックも必要なしという、時間も手間もかけず利益が得られる、投資家にとってタイムパフォーマンスを具現化した投資手段なのかもしれません。 ソーシャルレンディングのファンドの種類ソーシャルレンディングの事業者が扱うファンドは、主に以下の3種類に分けられます。 事業・企業支援型ファンド 不動産型ファンド インパクト投資・社会貢献型ファンド それでは、以下で詳しく見ていきましょう。   1.事業・企業支援型ファンド事業を支援したり、企業自体を支援することを目的としたファンドが、「事業・企業支援型ファンド」です。次に紹介する不動産型ファンドと並び、多くのソーシャルレンディング事業者が取り扱っています。 融資対象となる企業は、スタートアップ企業から中小企業、上場企業まで幅広くあります。 そのため、利回りや事業内容だけではなく、企業の財務状況や経営状況といったファンダメンタルズ分析までしっかり行った上で投資検討をする必要があります。 2.不動産型ファンド不動産関連事業を行う企業に向けて出資することを目的としたファンドが、「不動産型ファンド」です。融資を受けた企業は、不動産の取得や建築などに資金を使用します。 不動産担保付きならリスク軽減になる不動産型ソーシャルレンディングには、不動産担保付きのファンドがあります。もし、企業が倒産し貸倒れが起こった場合でも、担保があることで債権が回収できたり、出資金の毀損リスクを抑えたりすることができます。 3.インパクト投資・社会貢献型ファンド社会問題や環境問題の解決に取り組む企業支援を目的としたファンドが、「インパクト投資・社会貢献型ファンド」です。インパクト投資は、投資によるリターンだけではなく、社会貢献によるポジティブなリターンが期待できるため、近年注目されている投資です。 ソーシャルレンディングにおいては、太陽光発電・風力発電・バイオマス発電などの「再生可能エネルギー」を開発・提供するファンドや、発展途上国や貧困者を支援する「マイクロファイナンス」に関するファンドが多く見られます。 ソーシャルレンディングのメリットここでは、ソーシャルレンディングのメリットを3つ紹介します。 メリット1.利回りの高さソーシャルレンディングの大きな魅力は利回りの高さです。利回りは、事業者やファンドにより異なりますが、3%〜8%程度としているファンドを多く見かけます。メガバンクの定期預金の金利が0.002%であることを考えると、金利の差は数千倍にもなります。 しかし、極端に利回りが高いものは注意も必要です。利回りが高ければ、企業の返済負担も大きくなり、利息の支払いに遅れが生じるリスクが高いということです。いわゆるハイリスク・ハイリターンです。 最初は、無理をせず平均的な利回りのファンドに投資するのが無難です。また、一つのファンドだけではなく、いくつかのファンドに分散投資することも、リスクの軽減になります。 メリット2.少額から投資が可能投資には、現物不動産投資 のようにまとまった資金が必要な投資や、積立型の投資信託 のように、少額でもコツコツ長期間運用しないと利益が出にくい投資などさまざまな種類があります。 その点、ソーシャルレンディングは、1口1万円程度から投資が可能、そして短期運用でも利益を得られることから、お小遣い程度でも投資が始められるのが魅力です。 メリット3.運用に手間がかからない株式投資や投資信託は、社会情勢や為替変動の影響を受けて元本や配当金が変動することがあります。そのため、投資家は運用中も小まめな情報収集が必要になります。 一方、ソーシャルレンディングは、元本の価格変動がなく、利回りもあらかじめ決まっているため、投資後に情報収集は必要ありません。運用が開始されれば、償還まで定期的に分配金を受け取れるという手間の少ない投資です。 ソーシャルレンディングのデメリット続いて、ソーシャルレンディングのデメリットを3つ紹介します。 デメリット 1.中途解約できないソーシャルレンディングは、一旦運用を始めると、基本的には中途解約ができません。株式や投資信託は流動性が高く、いつでも売却が可能ですが、ソーシャルレンディングは流動性が低いため、急に資金が必要になっても換金が難しい投資です。 ソーシャルレンディングで投資をする際には、投資額や運用期間が自分にとって適切なものであるか、無理な投資額になっていないか、検証することが大切です。 デメリット2.貸倒れのリスクがあるソーシャルレンディング事業者をとおして融資をしていた企業が倒産すると、利子が得られないどころか元本すら戻らなくなる可能性があります。このことを、貸倒れ(デフォルト)と言います。 貸倒れまではいかないものの、経営不振で返済能力が低下し、返済遅延が発生する場合もあります。貸倒れや返済遅延は大きな損失につながることもあるため、特に注意が必要です。 デメリット3.悪質な業者がいるソーシャルレンディング事業者は、企業と投資家をつなぐ重要な役目を担っており、多額の資金を一旦プールする場所でもあります。その立場を利用して、過去には、集めた資金を流用したり、虚偽のファンドで投資を募るなどして行政処分を受けた事業者もあります。金融庁から、以下のような注意喚起も出されています。  参考:金融庁|ソーシャルレンディング投資にあたってご注意ください ソーシャルレンディングの始め方 ソーシャルレンディングの口座開設は、おおむね次のStep1からStep6のような流れで行います。  Step1 会員登録:ソーシャルレンディングの事業者を選び、サイトから会員登録します Step2 本人確認書類提出:マイナンバー、本人確認書類を提出します Step3 審査:事業者が提出書類に基づき審査が行われます Step4 口座開設:審査通過後に口座開設が完了します Step5 投資:申込ファンドを選び、申込みをします Step6 入金手続き:指定された期日までに入金します この後、運用が開始され定期的に分配金が得られる仕組みになっており、償還後に元本が戻ります。 ソーシャルレンディングを資産運用の選択肢に今回は、ソーシャルレンディングとは という基本から、メリット・デメリット、投資を始める際の注意点などを解説しました。 ソーシャルレンディングは、投資したい個人と、資金を借りたい企業をマッチングさせるサービスです。ソーシャルレンディングの最大のメリットは、少額から高い利回りで資産運用ができることです。しかし、投資には必ずリスクがあります。そのため、融資先を審査している事業者選びが、リスク軽減のためにはとても重要になります。 そして、先々何が起こるかわからないという意味では、長期運用より短期運用のほうが安心です。ソーシャルレンディングに興味をお持ちの方は、メリットとリスクを十分理解した上で、信頼できる事業者を選択し、無理のない投資額で始めてみてはいかがでしょうか。
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2022/09/25
#少額投資 #用語解説
企業型DCとiDeCoは併用すべき?それぞれの特徴や制度の違いを解説
確定拠出年金とは、将来の老後資金を準備するための私的年金制度のことで、個人型の「iDeCo」と、企業型の「企業型DC」の2種類があります。 2022年10月より、企業型DCとiDeCoの併用要件が緩和され、企業型DCに加入している人がiDeCoを利用しやすくなりました。 今回は、企業型DCとiDeCo  は併用すべきかや、併用した場合にいくら拠出できるのかを詳しく解説します。それぞれの特徴や違いについても触れますので、企業型DCとiDeCoの併用を検討している方は参考にしてください。 iDeCo(個人型確定拠出年金)とはiDeCo(イデコ) は、私的年金のひとつで、公的な老齢年金(国民年金、厚生年金)の給付とは別に老後資金を準備するための制度です。 加入は任意となっており、加入の申込みから、掛金の額、掛金の運用先まですべての決定権は加入者本人にあります。つまり、自己責任の下で資金を運用して成果を目指すものです。積立金とその運用益は60歳以降に年金または一時金として受け取ります。 iDeCoのデメリットは、資金を途中で引き出したり、原則、中途解約ができないことです。(加入者本人が死亡、病気やケガで障害状態となった場合は解約可能) ただし、経済状況等の変化により、途中で掛金の拠出が難しくなってしまった場合には、掛金を「減額」または「拠出の停止」することが可能です。 iDeCoの節税効果iDeCoは節税効果が高いことでも知られています。積立金は、全額が所得控除の対象となり、所得税、住民税の減額効果があります。  また、運用により発生した利益は非課税で、その運用益はそのまま再投資されるため運用期間が長いほど複利効果も高くなります。 さらに、受け取り時も「退職所得控除(一時金として受給)」か、「公的年金等控除(年金として受給)」のどちらかが適用され節税の恩恵を受けることができます。 企業型DC(企業型確定拠出年金)とは 企業型DCも、iDeCoと同様に私的年金制度です。掛金は加入者本人ではなく、加入者が勤務する企業(事業者)が拠出します。 従業員は運用指図者となり、資金の運用先や運用配分(アロケーション)を決め、老後資金の準備をすることになります。なお、企業型DCでも運用益や受取時の税制優遇措置が受けられます 。 企業型DCの加入者が転職する場合には、転職先の企業型DCに資金を移管することができます(年金ポータビリティ )。もし、転職先の企業が企業型DCを実施していない場合や、離職する場合には、iDeCoへ資産を移管することが可能です。個人事業主となる場合も同様にiDeCoへ移管できます。 参照:厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」 2022年の法改正でiDeCoと企業型DCが併用しやすくなった 従来から企業型DCとiDeCoの併用は可能でしたが、iDeCoへの加入は労使合意が前提であったり、企業型DCの掛金の上限額を変更しなければならなかったりと、企業にとって手間のかかる要件をクリアする必要がありました。 しかし、2022年10月にこれらの要件が撤廃されたことで、企業型DC加入者がiDeCoを利用しやすくなりました。以下が、企業型DC加入者のiDeCo加入要件(2022年10月~)です。 出典:厚生労働省「確定拠出年金制度 制度改正に関するチラシ」 iDeCoと企業型DCにはどんな違いがある? 前述のとおり、iDeCoと企業型DCの大きな相違点は「掛金の負担者が誰か」ということです。iDeCoの掛金は加入者本人が負担しますが、企業型DCの掛金は企業負担です。 その他にも以下のような相違点があるので、詳しく確認しましょう。 加入対象となる人 拠出限度額 手数料 運用商品の選択 1.加入対象となる人iDeCoの加入対象者と企業型DCの加入対象者には以下のような違いがあります。 iDeCoに加入できる人20歳以上60歳未満の人で、会社員、個人事業主、専業主婦(夫)など、国民年金保険の被保険者である人すべてが加入対象です。 また、2022年5月以降は、国民年金保険の任意加入被保険者も、原則70歳未満であれば加入対象となりました。(ただし、60歳以降にiDeCoの給付を受けていないことが条件) なお、iDeCoは公的年金の補完的制度であるため、国民年金保険料の未払いの人、または納付がない期間(未納期間や免除期間)については掛金の拠出はできません。 企業型DCに加入できる人勤務先の企業が企業型DCを採用している場合に加入することができます。つまり、勤務先に企業型DCがない場合は、企業型DCに加入できません。企業は、企業型DCへの加入を、従業員の任意とする場合と、企業側からの強制の場合があります。 なお、企業型DCに加入できるのは65歳未満とされていましたが、2022年5月の改正により70歳未満まで加入できるよう拡大されました。なお、加入開始の年齢は企業によって異なります。 2.拠出限度額毎月の拠出限度額にも以下のような違いがありますので確認していきましょう。 企業型DCに加入している会社員が、iDeCoを併用利用する場合の毎月の拠出限度額は、企業(事業者)が「確定給付型の年金」に加入しているか否かにより異なります。今回は、企業が確定給付企業年金(以下、DB)に加入していない場合と、している場合の2つのケースで説明します。 確定給付企業年金(DB)は企業年金制度のひとつで、企業(事業主)が従業員と給付内容をあらかじめ決定し、将来受け取れる年金額を確定するものです。 企業型DCのみに加入している場合のiDeCoの拠出限度額(DBの加入なし)企業型DCのみに加入している会社員の場合、iDeCoの拠出限度額は、1ヶ月あたり55,000円から企業型DCの拠出額を差し引いた金額の範囲内で、かつ、上限額は20,000円です。 例えば、事業者が企業型DCに35,000円拠出している場合は、iDeCoの拠出額は上限の20,000円まで可能ですが、事業者が40,000円拠出していたら、iDeCoの拠出額は15,000円が上限です。 企業型DCと確定給付企業年金(DB)の両方へ加入している場合のiDeCoの拠出限度額企業型DCとDBの両方へ加入している場合のiDeCoの拠出限度額は、27,500円から企業型DCの拠出額を差し引いた金額の範囲内で、かつ、上限が12,000円です。 たとえば、事業者の企業型DC拠出額が20,000円だとしたら、iDeCoの拠出額は7,500円が上限になります。 3.手数料iDeCo、企業型DCともに確定拠出年金制度を利用するためには、各種手数料が必要です。 iDeCoを始めるためには、加入時手数料、口座管理手数料、信託報酬、給付手数料等が必要になります。これらの費用は加入者が負担します。加入時手数料以外は継続的にかかる費用で、拠出金や給付金から差し引かれます。 口座管理手数料や信託報酬は、口座開設の金融機関や投資信託の種類により違いますので、各種手数料を比較して金融機関や商品を選ぶことを考えてもいいかもしれません。 企業型DCの場合、口座管理手数料は基本、会社負担です。 4.運用商品の選択iDeCoや企業型DCの運用商品は「投資信託」「定期預金」「保険」の3種類です。リスクの許容度により、価格変動型の投資信託、元本保証の定期預金など、自由に選択できます。ただし、商品ラインナップは口座を持っている金融機関によって異なります。 企業型DCでは、企業が加入している金融機関の商品から選ぶことになり、iDeCoでは、自分が選んだ金融機関の商品から選ぶことになります。iDeCoの場合は、商品ラインナップを比較して金融機関を決めることも可能です。 また、iDeCo、企業型DC共に、拠出金の投資先は一つに絞らず、複数の商品に拠出することがリスク分散のためには望ましいです。 iDeCoと企業型DCはどちらがおすすめ?前述の通り、iDeCoも企業型DCも税制優遇を活用できる私的年金制度です。自分で投資商品を選び、積立金を運用する点においてはどちらも同じです。 ただし、個人型のiDeCoは、任意加入のため、掛金、手数料共に全額が加入者本人の負担となります。 一方、企業型DCは企業(事業者)が主体の加入ですので、掛金、口座管理手数料も企業負担です。 勤務先の企業が企業型DCを実施していて加入が選択性の場合は、まずは企業型DCで企業が拠出する資金の運用指図者となるのが得策です 。その上で、拠出枠に残余があれば、iDeCoへの加入を検討しましょう。 企業型DCとiDeCoを併用して老後の資産形成を効率的に!今回は企業型DCとiDeCo の特徴や違い、どちらを利用するべきかなどを解説しました。 老後の私的年金作りとして活用される確定拠出年金制度。確定拠出年金には、個人で掛金を拠出するiDeCoと、企業が掛金を負担する企業型DCがあります。 2022年10月より、要件緩和により企業型DCとiDeCoの併用利用が容易になりました。ただし、今回は触れていませんが、企業型DCの「マッチング拠出」をしている人は、iDeCoとの併用ができないことは従来通りです。 老後の生活に公的年金だけでは心許ないと感じている人は増えています。確定拠出年金のようなコツコツ積立投資は、運用期間が長くなるほど複利効果が高くなり有利になります。 老後資金作りの一つの手段として、企業型DCとiDeCoを併用を検討してはいかがでしょうか。
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2023/04/18
#税金・節税 #老後資金 #用語解説 #iDeCo
老後2,000万円では足りない?本当に必要なお金はいくら?
老後の生活費について、公的年金だけでは不十分と考えている方が多くなっています。老後2,000万円問題が一時、世間を賑わせたのは記憶に新しいところではないでしょうか。しかし、老後に必要な資金は人それぞれ。保有している金融資金やライフスタイルによって大きく異なります。 2,000万円あれば安心というわけでもなく、老後2,000万円あっても足りない 場合もあるでしょう。重要なのは自分に本当に必要な老後資金を知ることです。 目次(クリックで項目へジャンプ) 老後2,000万円問題とは? 老後2,000万円問題の概要をおさらい 老後に2,000万円では足りないケースとは? 1.介護費用がかかる場合 2.想定以上に長生きした場合 3.円安・インフレが影響する場合 コロナ禍で「老後に2,000万円不要」説も? 「老後2,000万円問題」当時とコロナ禍以降を比較 老後に本当に必要な資金は生活スタイルで変わる ゆとりある老後?必要最低限の老後? ゆとりある老後の生活費 持ち家?賃貸?住居の違い 老後の暮らしをあらかじめシミュレーションしておこう 老後2,000万円問題とは? 老後2,000万円問題の概要をおさらい 2019年、「総務省の家計調査報告」を基に、金融審議会 市場ワーキング・グループが「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)という報告書を作成しました。 内容は、主な収入が年金収入である高齢夫婦無職世帯の場合において、毎月の家計収支が約5.5万円赤字になることから、老後30年と仮定すると約2,000万円が不足するというものでした。これが、いわゆる老後2,000万円問題 です。 (出典:資料2 厚生労働省 提出資料 P24 ) 不足額(月額): (実収入)209,198円 -(実支出)263,718円 = ▲54,520円 老後に2,000万円では足りないケースとは? 1.介護費用がかかる場合 この調査の支出項目に介護費の計上がありません。もし、介護が必要な状態になると、介護費が上乗せされるためさらに支出が増えることになります。 生命保険文化センターの調査で、介護のために一時的に支出した費用の平均は74万円ということがわかっています。また、月々の自己負担額は介護保険サービスを利用しても平均8.3万円かかるそうです。 介護にかかる費用は、在宅介護か施設介護かにより大きな差となります。老後のライフプランを立てるときには、介護の希望も忘れずに盛り込むことが大切です。 <生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査」/2021(令和3)年度>(出典:生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計 介護にどれくらいの費用・期間がかかる? ) 2.想定以上に長生きした場合 日本人の平均寿命はこの先もさらに伸びることが予想されています。老後の生活費の不足分を預貯金から補填して生活する場合、寿命が伸びるほどより多くの自己資金が必要となります。 (出典:内閣府 令和4年高齢社会白書 第1章高齢化の状況 ) 長生きリスクに立ち向かうためには、保有資産の減少速度を遅らせることしかありません。元気なうちは働き少しでも収入を得ることや、リスクの低い投資でお金を育てるなど、何らかの工夫や対策が必要になってきます。 3.円安・インフレが影響する場合 年金収入や保有資産、お金の使い方などの個人的な要因でお金が不足する場合だけでなく、個人の努力ではどうすることもできない外的要因により資金不足となることもあります。 アフターコロナで諸外国ではインフレが急速に進行しています。その上、円安も手伝って、モノやエネルギーを輸入している日本の物価は高騰しています。物価が上昇すると、円の価値は下がります。たとえば、これまで100円で買えていたジュースが200円になってしまったら、円の価値は半分です。 もし、物価が数年後に2倍になっていたら、保有している2,000万円の金融資産の価値は1,000万円になるのと同じことを意味しています。つまり、老後資金として2,000万円の価値が、この先も2,000万円のままである保証はないのです。 コロナ禍で「老後に2,000万円不要」説も? 「老後2,000万円問題」当時とコロナ禍以降を比較 お伝えしている通り「老後に2,000万円不足する」と言われたのは、2017年の総務省の家計調査のデータに基づいてのことです。 その後、2021年の同調査では家計収支に変化が生じています。コロナ禍による外出自粛の影響でお金を使う機会が減ったためか、2021年の家計調査では支出額が減りました。実収入が増えているのは、2020年の一律10万円給付の影響が考えられます。 下表は、2017年と2021年の家計調査データを比較したものです。 【高齢夫婦無職世帯 家計調査 2017年 vs 2021年 収支比較(月額)】 項目 2017年 2021年 ①実収入 年金収入など 209,198円 236,576円 ②実支出 消費支出(食費・住居費・日用品費など) 235,477円 224,436円 非消費支出(社会保険料・税金など) 28,240円 30,664円 ③過不足 ①-② ▲54,519円 ▲18,524円 30年後 ③ × 12ヶ月 × 30年 ▲19,626,840円 ▲6,668,640円 (出典:総務省 家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年)II 世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯) )(出典:総務省 家計調査報告 2021年(令和3年)平均結果の概要 P20 ) 2017年のデータでは30年後に約2,000万円不足すると言われたものが、2021年には約670万円の不足に変化しています。コロナ禍の影響が多分にあるとはいえ、時の流れとともにデータも家計も変化するということです。 つまり、老後2,000万円問題は、一時のシミュレーション上の数字であって、この数字に囚われすぎる必要はありません。自分の老後に必要な資金をシミュレーションしてみることが大切です。 老後に本当に必要な資金は生活スタイルで変わる ゆとりある老後?必要最低限の老後? 生命保険文化センターの調査では、ゆとりある老後に必要な資金は月36.1万円という結果が出ています。 ゆとりある老後の生活費 【生活保障に対する調査 令和元年度】(出典:生命保険文化センター リスクに備えるための生活設計 老後の生活費はいくらくらいと必要と考える ) 総務省家計調査の支出が最低生活費だとすると、老後のゆとり費とは、旅行やレジャー、趣味、子や孫への援助金などがあげられます。2021年総務省家計調査の年金収入額は約24万円、ゆとりある老後の生活費が36万円だとすると、30年で必要資金は4,320万円になる計算です。 持ち家?賃貸?住居の違い 老後をどこで暮らすのかによっても、必要資金は違ってきます。持ち家か賃貸か、それとも老人ホームなどの施設入所かなど。 支出の中で住居費は大きなウェイトを占めます。2017年家計調査の支出の内訳を見ると、住居費の計上は約1.4万円ですので持ち家であることが想定されます。賃貸住宅で暮らす場合や、老人ホームなどの施設で暮らすことを希望する場合は、老後の必要資金をさらに上乗せして見積もる必要があります。 老後の暮らしをあらかじめシミュレーションしておこう 「老後2,000万円では足りない 」という噂とその真偽について解説をしました。 65歳時点の保有資産はどれくらいになりそうか? 年金受給見込み額はいくらか? 何歳まで働くのか? どんな暮らしがしたいのか? これらを整理すると、自身の老後の大まかな必要資金が見えてきます。一般的な数字に惑わされずに、自分の場合はいくら必要かをシミュレーションして、対策することが大切です。
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2022/10/19
#老後資金
現行のNISAから新NISAへは「ロールオーバー」できる?
来年2024年1月、NISA制度 が生まれ変わります。(以下、新NISA と表記します) NISAといえば、少額から非課税で投資ができるお得な制度として認知されていますが、現行のNISAは期間限定の制度です。しかし、2024年からNISA制度は恒久化され、NISA口座の資産は無期限で非課税運用ができることになります。 すでにNISAを利用している人は、現在運用しているNISA口座を新NISAへロールオーバーできるのか、新NISAの口座開設は新たに必要なのかなど気になることも多いでしょう。 そこで本記事では、新NISAにおけるロールオーバー についてや新制度のポイントを解説していきます。現在NISAを利用している人や、これからNISAを始めたい人も押さえておくべき内容なので最後までお読みください。 まずは「NISA制度」をおさらい ここでは、現行のNISA制度ならびに2024年から始まる新NISAの概要を解説します。 まずはNISA制度とは何かを押さえておきましょう。 2023年までの「現行のNISA制度」 NISA(少額投資非課税制度)はその名の通り、少額から非課税で投資ができる制度として、2014年から「一般NISA」「ジュニアNISA」「つみたてNISA」と順次施行されました。 NISA制度は投資から発生する利益は非課税、いつでも引き出し可能であることから、低金利時代の預貯金の代替先としても注目されています。 なお、現行NISAは年間投資枠や非課税運用期間が限定的で、かつ、「一般NISA」と「つみたてNISA」口座は年単位の変更はできるものの、2つ同時に保有することはできません(併用不可)。 また、一旦、非課税枠で買付けを行うと、その非課税枠は、のちに資産を売却しても復活せず再利用できません。つまり、非課税で運用できる資金は、最大で、一般NISAは600万円、つみたてNISAでは800万円が上限です。 参照:金融庁 NISAとは   2024年から始まる「新NISA制度」 (*上場株式・投資信託等:整理・監理銘柄・信託期間20年未満、高レバレッジ型・毎月配分型の投資信託は除外) 2024年1月より大幅に改正、拡充される新しいNISA。新NISAのポイントは次の4つです。 制度の恒久化 非課税投資期限の撤廃 年間投資枠の拡大 生涯投資枠の設定(1,800万円) 制度が恒久化され、非課税投資期間が無期限になることで、投資の時期や保有期間を気にすることなく、いつからでも非課税投資を始められます。また、次に説明しますが、非課税期間が無期限になれば、ロールオーバーの概念もなくなるため、今よりシンプルな仕組みになります 。 さらに、投資枠も拡大されます。現行NISAでは「一般NISA」と「つみたてNISA」のどちらか一方の利用しかできず、年間投資枠は120万円もしくは40万円が最大です。 一方、新NISAでは、成長投資枠240万円、つみたて投資枠120万円を併用すれば、年間最大で360万円まで非課税投資が可能となります。 また、新たに1,800万円の生涯投資枠が設けられます。ただ、「成長投資枠」に内数が設定されているため、1,800万円のうち、株式などのスポット購入に充てられる額は、1,800万円のうち1,200万円が上限です。 参照: 金融庁 NISAとは 新NISAで注目したいのは「投資枠の再利用」 現行の「一般NISA」「つみたてNISA」では、非課税枠の再利用ができません。一方、新NISAでは、資産を売却すると、売却資産の取得額(投資元本)ベースで投資枠が復活します。 たとえば、年間360万円を投資し続けると、5年目に生涯投資枠の1,800万円を使い切ります。これまでの制度であれば、非課税投資枠がなくなれば、これ以降、NISA口座での買付けができませんし、仮に資産を売却しても投資枠は復活しません。 しかし、新NISAでは、資産の全部または一部を売却すれば、資産の取得額ベースで投資枠が復活し、再利用できる仕組みです。投資枠を再利用できれば、投資先を変更をしたい場合や、ライフイベントのために資金が必要な場合など、これまで以上に気軽に売却ができます。 NISAのロールオーバーとは 現行の一般NISAの非課税期間は5年ですが、非課税投資を継続したい場合は、資産を6年目の非課税枠に移管することができます。これを、ロールオーバーといいます。ロールオーバーすると、さらに5年間は非課税で資産運用ができます。   なお、「つみたてNISA」はロールオーバーできません。 20年の非課税期間経過後は売却して現金化するか、課税口座へ払い出して運用を続けるかの2択です。 出典:金融庁 一般NISAのポイント 現行NISAから新NISAへはロールオーバーできない 「一般NISA」や「つみたてNISA」の資産は、2024年の新NISA開始後どうなるのでしょうか? 結論からいうと、現行NISAの資産を新NISAへロールオーバーすることはできません 。つまり、2023年中に「一般NISA」「つみたてNISA」で買い付けた資産は現行NISAの非課税制度のままで運用し、2024年以降の買付けは「新NISA」で運用することになります。新NISAの口座は、現行NISA口座を保有していれば、自動的に開設されます。 なお、2024年以降も、「一般NISA」「つみたてNISA」ともに売却はいつでも可能ですし、非課税期間終了まで保有する場合は、次に説明する方法で対応することになります。 2024年以降に非課税期間が終わる場合はどうすればいい? 「一般NISA」「つみたてNISA」ともに、非課税期間が終了すると次のいずれかの対応が必要です。 1.売却する 非課税期間終了前に、資産を売却します。非課税期間中に売却すれば、売却益に税金がかかりません。 2.課税口座(特定口座・一般口座)へ払い出し 投資を継続したい場合は、資産を課税口座へ払い出して運用を続けます。なお、課税口座へ資産を移すときには、資産の取得額が変わることに少し注意が必要です。 たとえば、NISA口座で100万円で購入した株式が、課税口座へ移す時に120万円へ値上がりしていたら、課税口座での取得額は120万円になります。逆に、80万円に値下がりしていれば80万円が取得額です。 課税口座の取引から発生した収益には、20%の税金がかかります。 課税口座に取得額80万円で払い戻したあと、90万円に株価が回復したときに資金が必要になり売却したとすると、実質利益はマイナス30万円(120万円→90万円)なのにもかかわらず、売却益は10万円(80万円→90万円)とみなされ10万円に20%の税金がかかります 収益は、この移管の際の取得額をもとに計算されるため、売却のタイミングによっては、実質、収益がない、もしくは損をしていても税金がかかることがあります。 生まれ変わる新NISAで資産運用をはじめよう 新しいNISAは、制度の恒久化、非課税期間の無期限化、投資枠の拡大などにより、利便性が高まります。 ただし、現行NISAの資産を新NISAへロールオーバーすることはできません 。 2023年中の投資は、現行の「一般NISA」「つみたてNISA」の制度の下、非課税期間終了まで運用が可能です。 2024年以降の投資に、新NISAの制度が適用されます。 現行のNISA口座の保有者は、2024年から手続き不要で自動的に、新NISAが利用できる見込みです。 NISAは解約に制限がなくいつでも引き出し可能ですので、教育資金、住宅資金、老後資金などあらゆるライフイベントに活用できます。拡充されるNISAの仕組みを理解して、資産形成に役立てていきましょう。
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2023/04/20
#税金・節税 #新しいNISA
不動産投資における節税の仕組みや節税可能な税金の種類を解説
昨今、節税目的での 不動産投資 が注目されています。 不動産投資で節税 ができるとはどういうことなのでしょうか。その仕組みを解説します。 目次(クリックで項目へジャンプ) 不動産投資で節税できる5つの税金 1.所得税 2.住民税 3.法人税 4.相続税 5.贈与税 不動産投資の節税ポイントは減価償却と損益通算 減価償却費の計上 損益通算して課税所得を圧縮 減価償却と損益通算の節税効果 減価償却後に投資不動産を売却する場合の税金 不動産投資のその他の節税 経費の計上による節税 家族への給与支払いによる節税 節税効果を理解して効果的な不動産投資を 不動産投資で節税できる5つの税金 不動産の管理・運用により発生した収益から必要経費を控除したものを不動産所得といいます。不動産所得に損失(赤字)が出た場合、給与所得や事業所得と相殺することが可能です。これを損益通算といいますが、損益通算をすることで、総所得額(課税価額)が下がるため、税金が減額されます。 また、資産を現金で保有するより不動産で保有したほうが節税になる場合があります。では、まずは不動産投資により節税できる税金5つを解説します。 1.所得税 年間の不動産所得が赤字となった場合、給与所得から赤字分を控除できるため課税所得を下げられます。課税所得が下がれば所得税も少なくなりますので、年末調整済みの会社員であれば、確定申告をすることで所得税の還付が受けられます。 たとえば、課税所得が1,000万円の方が不動産所得で200万円の赤字を出した場合、800万円の所得の方と同等の所得税を払えばいいことになります。自営業者やフリーランスの方であれば、不動産所得の赤字を事業所得から控除して確定申告すれば、所得税額を抑えることができます。 2.住民税 住民税は前年の所得に対して課される税金です。所得税同様、不動産所得との損益通算により課税所得を下げられれば、住民税も減額されます。ここで、「あれ、節税の話なのに、節税になっていない」と、気づかれた方もいるでしょう。 課税所得額が減れば税金が安くなるのは当たり前です。これでは節税とは言えません 。節税と言うからには、手取り額はそのままに、税金だけを減らすことがポイントです。その仕組みについてはこの後、「減価償却」の項で詳しく説明します。 3.法人税 所得税は7段階の累進課税方式で、課税所得額に応じて5%~45%が課税される仕組みです。所得の高い人ほど高い税率が課されます。 たとえば、課税所得2,000万円の方の所得税率は40%で、不動産所得にも同率の所得税率が適用されます。一方、資本金1億円以下の法人の場合、法人税率は、800万円以下の部分は15%、800万円超の部分については23.2%です。 つまり、一定の所得区分以上になると、所得税率よりも法人税率が低くなるため、法人化したほうが税金が抑えられることになります。ただし、法人化すると不動産所得に赤字が生じた場合でも給与所得と損益通算はできなくなることに注意が必要です。 4.相続税 相続税対策として不動産を活用することができます。現金や預金に対しての相続税は額面そのものに課されますが、不動産に対する相続税は相続税評価額に課されます。 相続税評価額は、「路線価」や「固定資産評価額」に基づいており、土地では実勢価格の8割程度、建物では新築価格の7割程度とされています。つまり、現金を相続させるより不動産に換えたほうが課税対象となる価額が下がるため、税金が軽くなるのです。 5.贈与税 贈与税には暦年課税と相続時精算課税という2つの課税方式がありますが、不動産など評価額の大きな財産の贈与に適しているのは相続時精算課税です。 相続時精算課税は一人の贈与者から合計2,500万円までの贈与に対する税金が先送りされる仕組みです。先送りされる理由は、贈与者が死亡して相続が発生した際には贈与された財産を相続財産に持ち戻して計算をするため、結局相続税で税金を精算することになるからです。 しかし、現金ではなく不動産で生前贈与しておくことで節税となるケースがあります。なぜなら、生前贈与された不動産を相続税の算定に持ち戻すときの価額は、相続時の相続税評価額ではなく贈与時の評価額 だからです。 たとえば、贈与時2,000万円の不動産が、相続発生時に3,000万円になっていても、相続税は2,000万円に対して課されます。値上がりが期待できる不動産を取得して、生前に贈与することで節税になるのです。 不動産投資の節税ポイントは減価償却と損益通算 次に、不動産投資における節税の大きなポイント「減価償却」と「損益通算」について解説します。 減価償却費の計上 所得税、住民税の節税で触れましたが、節税目的の不動産投資は、手取り所得は減らさず、帳簿上に損失(赤字)を出すことがポイントです。そのためには「減価償却費」の計上がキーになります。減価償却費は、固定資産をその耐用年数に分割して必要経費に計上できるものです。 実際の支払いは初年度の1回のみ、しかし経費として数年にわたり分割計上できるため、2年目以降は実際の支出なしで、帳簿上のみの支出計上ができる仕組みです。なお、建物は経年劣化するため減価償却の対象物ですが、土地は経年による償却がないため対象外です。 損益通算して課税所得を圧縮 減価償却と損益通算は、不動産投資の節税においてワンセットと考えます。損益通算とは、本業の所得から不動産所得の損失(赤字)を差し引いて本業の課税所得を圧縮する方法です。 たとえば、課税所得が3,000万円の方に、不動産所得で帳簿上1,000万円の損が出た場合、損益通算することで課税所得が2,000万円になります。損益通算により課税所得を減らし所得税を下げる、これが不動産投資による節税の仕組みです。 減価償却と損益通算の節税効果 実際の節税効果を見てみましょう。 課税所得3,000万円の方が、耐用年数残り4年の中古不動産を1億円で購入したとします。購入額1億円の内訳は、土地価格が6,000万円、建物価格が4,000万円です。なお、購入不動産は賃貸しないこととし、キャッシュフロー(利益)を生み出さないものとします。 土地は減価償却対象外であるため、建物4,000万円を4年で償却することになります。1年間に計上できる減価償却費は1,000万円です。保有不動産は収益を生み出していないため、1,000万円を経費としてそのまま損失計上すると、損益通算により課税所得は2,000万円へ減額されます。 課税所得3,000万円の所得税は920.4万円 課税所得2,000万円の所得税は520.4万円 このように、確定申告をすることで差額の400万円(920.4万円-520.4万円)が還付されます。つまり、4年で1,600万円の節税 となります。 減価償却後に投資不動産を売却する場合の税金 続いて、建物4,000万円すべてを償却した後に、不動産を購入時と同じ1億円で売却するとしたケースを見ていきましょう。 不動産は購入したときより高値で売ると、譲渡所得がかかります。今回、購入時と同じ金額で売却していますが、建物価格4,000万円はすでに償却しているため、譲渡所得として課税対象となるのは土地の6,000万円です。 6,000万円の譲渡益に課される税金は、不動産の保有期間により異なります。5年以上保有の場合は長期譲渡所得となり、税率は20%、5年未満に売却すると短期譲渡所得となり税率は31%です。 仮に購入から5年後に売却すると、1,200万円(6,000万円✕20%)が税金として取られますが、損益通算により4年間で1,600万円が節税されているので、この不動産投資により400万円(1,600万円-1,200万円)を節税したことになります。 なお、節税の仕組みを簡潔にお伝えするため、仮定の数字で解説しています。実際は売買にかかる各種手数料等を含める必要があります ので、シミュレーションをきちんと行うことが大切です。 不動産投資のその他の節税 税金をなるべく抑えるには、課税所得を圧縮することが重要な要素であることはお伝えしたとおりです。課税所得を抑えるために減価償却費の計上は大きなポイントですが、他にもできることがあります。 経費の計上による節税 不動産の管理・運用により得られる収益から、次の必要経費を控除することができます。 固定資産税 損害保険料 減価償却費 修繕費 (出典:国税庁No.1370 不動産収入を受け取ったとき ) この他、ローンで不動産を購入した場合には、借入金の利息が経費計上できます。 また、自動車やパソコンなども明らかに不動産収入を得るために使用されるものであれば、経費として計上できます。それらが固定資産となる場合は、減価償却費として分割して計上します。必要経費となるものは漏らさず計上することで、課税所得が抑えられ税金の節約につながります。 家族への給与支払いによる節税 不動産経営が大規模である場合には、家族が経理処理や清掃、管理などを請け負うことがあります。その場合、家族へ支払う給与は必要経費として計上ができます。 不動産所得を確定申告する場合、白色申告と青色申告のいずれかを選ぶことになります。白色申告では、経費計上できる家族への給与額に上限がありますが、青色申告では上限額の設定はないため、家族への給与全額が経費として計上可能です。ただし経費として計上できるのは、不動産収入が事業的規模であることが条件です。具体的には、集合住宅では部屋数が10室、戸建て住宅では5棟が事業的規模の目安です。 青色申告には、最大65万円の控除や損失の繰り越しなど、白色申告にはない特権があります。より税金を抑えるためには、青色申告を選択したほうが効果的です。 節税効果を理解して効果的な不動産投資を 不動産投資によって節税が見込まれる税金 の種類とその効果について解説しました。 所得税や住民税は、建物の減価償却費を分割で経費計上し損益通算することで、課税所得が抑えられ納税額を下げられます。ただし、投資不動産を売却するときに課される税金を考えると、節税目的の場合、所得税率が低い方の不動産投資には、節税のメリットはないと考えましょう。 相続税や贈与税に関しては、現金より不動産で引き継いだほうが税金が抑えられるケースがあります。不動産投資による節税効果は、個人によりまったく異なるため、トータルでキャッシュの流れをシミュレーションして慎重に検討することが重要です。
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2022/09/27
#税金・節税
不動産クラウドファンディングの利回りは?実際の利益をシミュレーション
不動産クラウドファンディングは、1万円からの少額出資で不動産投資ができるとあって近年急成長している注目の投資方法です。本記事では、 不動産クラウドファンディングの利回り の相場や収益の仕組み、また、ファンドを選ぶときの注意点を解説します。 不動産クラウドファンディング投資に興味のある方はぜひ参考にしてください。 目次(クリックで項目へジャンプ) 不動産クラウドファンディングとは? 不動産クラウドファンディングの利回りの相場は5~7% 他の不動産投資の利回りと比較 不動産クラウドファンディングで得られる収益は2種類 インカムゲイン キャピタルゲイン 不動産クラウドファンディングの収益シミュレーション 不動産クラウドファンディングの利回りの考え方 1.表面利回り 2.実質利回り 3.想定利回り 不動産クラウドファンディングのリスク 優先劣後方式とは 不動産クラウドファンディングの案件選びのポイント3つ 1.運営事業者の調査 2.利回りと運用期間 3.リスク回避措置の有無 不動産クラウドファンディングを投資先の選択肢の一つに 不動産クラウドファンディングとは? 不動産クラウドファンディング は、不動産の権利を小口化して複数の投資家から資金を集め、運営事業者が集めた資金で対象不動産を購入し運用益や譲渡益を得るという投資方法です。出資した投資家は運用収益を分配金という形で受け取ることになります。 少額からの投資が可能であることに加え、インターネット上で取引が完結するという利便性もあり、近年急成長している投資分野です。 不動産クラウドファンディングの利回りの相場は5~7% 不動産クラウドファンディングの利回りは、下は3%台から高いものでは10%を超えるものまであります。ファンドによりさまざまで、おおむね5~7%程度(年利)が相場です。 (参考:Crowd Funding Channel 【 徹底比較】不動産クラウドファンディングサービス別実績 ) 他の不動産投資の利回りと比較 不動産クラウドファンディング以外の不動産投資としては、現物不動産投資やREIT(不動産投資信託)があります。現物不動産投資とは、不動産を購入して賃貸により収益を上げる、または売却して譲渡益を狙うという投資方法です。 REIT(不動産投資信託)は、不動産に少額から投資できる点では不動産クラウドファンディングと同じですが、投資対象、保有期間、流動性などに相違点があります。不動産クラウドファンディングの利回りの相場と、その他の不動産投資の一般的な利回りを比較してみましょう。 不動産投資の種類 利回り 不動産クラウドファンディング 5~7% 現物不動産 3~4% REIT(J-REIT) 3~5% *現物不動産は、賃貸住宅1棟の期待利回り、オフィスビルの期待利回り*J-REITは、分配金利回り (出典:一般社団法人 不動産証券化協会 マーケット概況 J-REIT分配金利回り10年間 )(出典:日本不動産研究所 第47回不動産投資家調査 2022年10月現在 現物不動産 オフィスビルの期待利回り、賃貸住宅1棟の期待利回り ) 利回りの差はそれほど大きなものではありませんが、3つの違いは、投資に必要な資金や使い勝手です。不動産クラウドファンディングが他の不動産投資よりも優位な点は、少額投資が可能、投資対象の決定権、短期間運用が可能であるところです。 不動産クラウドファンディングで得られる収益は2種類 投資運用で得られる利益は、「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」 の2種類に区別されます。インカムゲインとは、投資資産を運用することで得られる利益のこと、そして、キャピタルゲインとは、投資資産そのものを売却したときに得られる譲渡益のことです。買った値段より高い値段で売れば、キャピタルゲインは大きくなります。 不動産クラウドファンディングによる利益の分配方法にも「インカムゲイン」と「キャピタルゲイン」があります。 インカムゲイン 不動産クラウドファンディングのインカムゲインとは、対象不動産を運用することで得られる収益のことです。住居用やオフィス用不動産であればそこから発生する家賃収入がインカムゲインです。インカムゲインを投資家へ分配するファンドのことをインカムゲイン型ファンドといいます。 キャピタルゲイン 不動産クラウドファンディングのキャピタルゲインとは、不動産の譲渡益です。例えば1億円で購入した不動産を1億2千万円で売却したら、2千万円がキャピタルゲインです。このようなキャピタルゲイン(譲渡益)を投資家へ分配するファンドのことをキャピタルゲイン型ファンドといいます。 また、インカムゲインを得ながら、キャピタルゲインも得られるファンドもあり、これを「キャピタルゲイン重視型」や「インカムゲイン重視型」などと呼ぶこともあります。 不動産クラウドファンディングの収益シミュレーション 実際の収益をイメージするために、次の架空のファンドに投資した場合の収益を計算してみましょう。 ファンド名称 VWCL Funding 予定分配率(年換算) 5% 運用期間 12カ月 出資単位(1口当たり) 1万円 例えば、10万円分(10口)購入したとすると、予定分配金は、【10万円x5%=5,000円】です。 ただし、実際は20.42%の源泉徴収がありますので、手元に入るのは3,979円です。 不動産クラウドファンディングの利回りの考え方 不動産クラウドファンディングのファンドの募集時の利回りは「予定利回り」や「想定利回り」などで表記されます。最大の利益を想定したものです。インカムゲイン型の場合、空室が多い場合など想定通りの運用ができないと実利益は予定利回りを下回る可能性があります。 また、反対に、キャピタルゲイン型のファンドの場合、想定より高い値段で不動産を売却できれば予定利回りを上回る利益を得られることもあります。 なお、一般的に利回りは次の3つを使い分けていますので違いを見ていきましょう。 1.表面利回り グロス利回りともいい、単純に物件の購入価格に対して年間収益はいくらかというもので、物件の維持管理費などは一切考慮しない表面上の利回りです。 ▽表面利回り計算式 (%)年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 x 100 2.実質利回り 表面利回りに購入時にかかった初期費用や物件の維持管理のための必要経費(固定資産税、管理費、修繕費、火災保険料など)を加味した利回りのことで、ネット利回りともいいます。表面利回りよりも実態に近い利回りであるため、同一の投資先であれば、表面利回りより低い数字になります。 ▽実質利回り計算式 (%)(年間家賃収入 - 必要経費) ÷ 物件購入価格 x 100 3.想定利回り 投資不動産をフルに活用できた場合の利回りです。賃貸物件であれば、満室であると想定して得られる収益により計算されています。賃貸物件に空室が出てしまうと家賃収入が減るため、実際、手にできる分配金は想定利回りを下回ります。また、想定を下回る金額で不動産の売却を行った場合も同じです。 ▽想定利回り計算式(%)満室と仮定した年間家賃収入 ÷ 物件購入価格 x 100 不動産クラウドファンディングのリスク 投資には大なり小なり必ずリスクが存在します。不動産クラウドファンディングも投資ですので、分配金が想定通りに還元されないことや、元本割れの可能性もゼロではありません。しかし、多くの不動産クラウドファンディングでは、投資家の出資元本を守るために、優先劣後方式という仕組みを取り入れています。 優先劣後方式とは 一つのファンドに対し、投資家が優先出資を行い、事業者が劣後出資を行う仕組みです。これにより、対象不動産の価値が下落して損失が出てしまった場合でも、その損失は最初に劣後出資者の事業者が負担することになります。損失が劣後出資額を超えなければ、優先出資者の出資部分に影響はありません。仮に損失が劣後出資額を超えてしまうと、優先出資者である投資家の出資額にも影響がおよびます。 優先出資率と劣後出資率の割合はファンドによって異なりますので、投資をする際は必ず確認するようにしましょう。 不動産クラウドファンディングの案件選びのポイント3つ いざ、不動産クラウドファンディングを始めようと思っても、数あるファンド(案件)の中から何を選べばいいのか迷います。 そこで、ファンド選びのポイントを3つに絞ってお伝えします。 1.運営事業者の調査 ファンドの運営事業者が倒産してしまうと、配当を受けられなくなる可能性があります。運営方針や運用実績などを調べ、ファンドの運営事業者を選ぶようにしましょう。 2.利回りと運用期間 ファンドを選ぶときに利回りは重要な指標となりますが、運用期間も大切な要素です。不動産クラウドファンディングは原則、中途解約ができないため、運用期間が自分に合ったものであるか確認をしましょう。 利回りは通常、年利で表記されています。運用期間が1年に満たない場合は、表記通りの利回りにはなりませんので注意が必要です。例えば、年利6%で運用期間が6カ月の場合、利益は半分の3%です。また、1口1万円から出資できるファンドも数多くありますが、最低出資金額が10万円以上などのファンドもあります。自分の投資許容範囲額であるかの確認も必要です。 3.リスク回避措置の有無 投資家のリスク回避のための措置が取られているかも必ず確認しましょう。優先劣後方式が取られている場合は、優先出資と劣後出資の出資割合についても必ず確認するようにしてください。 不動産クラウドファンディングを投資先の選択肢の一つに 今回は、不動産クラウドファンディングの利回り について解説しました。不動産クラウドファンディングは、少額から資産運用ができる投資方法として注目されています。自分でファンドを選べば、基本的にファンドに運用を任せるだけでいいので手間なしであることも人気の要因でしょう。 また、利回りに幅があるからこそ、自分のリスク許容範囲に合わせてファンドを選ぶことができます。一方で、満期期限まで解約できないなどの制約があることや、事業者の倒産リスクや元本割れリスクもゼロではありません。 メリット、デメリットをしっかり理解した上で、投資先の選択肢のひとつに不動産クラウドファンディングを加えてみてはいかがでしょうか。
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2022/12/25
#不動産特定共同事業法(不特法) #投資の種類と利回り #少額投資
老後2,000万円問題とは?一人暮らしの必要資金はどれくらい?
老後2,000万円問題が話題になったのは2019年のこと。金融庁の審議会がまとめた報告書を、当時の担当大臣が政府のスタンスと違うことを理由に受け取りを拒否したことで、2,000万円という数字が注目されました。 一方で、具体的な数字が出てきたことで、人々が老後の資金について考えるきっかけになりました。老後2,000万円問題とは 何だったのか?よりよい老後を送るために今からできることを考えます。 目次(クリックで項目へジャンプ) そもそも老後2,000万円問題とは? 老後2,000万円問題のおさらい 2,000万円の根拠とは? コロナ禍で必要な老後資金に変化あり 夫婦の家計収支 一人暮らしの家計収支 老後資金不足になる要因3つ 1.長生きリスク 2.働き方の多様化と退職金の減少 3.年金制度への不安 老後2,000万円問題を乗り切る方法 1.老後のライフプランを作成する 2.生活費を見直す 3.長く働くことを検討する 4.年金受給の繰り下げを検討する 5.つみたてNISAやiDeCoを活用して資産運用する 老後資金は一括で準備できなくてもいい そもそも老後2,000万円問題とは? 老後2,000万円問題のおさらい 金融庁が作成した、金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日)が老後2,000万円問題の発端です。 報告書は、2017年の高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳上の夫婦のみの世帯)において、支出が収入を月ベースで約5.5万円上回っており、老後30年として計算すると、約2,000万円不足するという内容でした。(出典:「金融審議会 市場ワーキング・グループ報告書」 「高齢社会における資産形成・管理」(令和元年6月3日) ) 2,000万円の根拠とは? 発端の「2017年高齢夫婦無職世帯の家計収支」で具体的な数字を確認します。 (出典:総務省 家計調査報告(家計収支編)平成29年(2017年)II 世帯属性別の家計収支(二人以上の世帯) ) ①実収入(公的年金など):209,198円②消費支出(食費、住居費、水道光熱費など):235,477円③非消費支出(社会保険料、税金など):28,240円 ① - (②+③)= ▲54,519円 1ヶ月の収支の不足額が約5.5万円となります。老後30年として計算すると 5.5万円 × 12ヶ月 × 30年=1,980万円 これが、「老後2,000万円問題」と言われるゆえんです。 コロナ禍で必要な老後資金に変化あり 老後2,000万円問題が浮上したのは2019年ですが、2021年の高齢世帯の家計収支のデータを見ると収支に変化が生じています。 夫婦の家計収支 高齢夫婦世帯では、2021年、実収入から消費支出+非消費支出を差し引くと、その不足額は月額18,525円です。老後30年として計算すると、不足額は約670万円です。 一人暮らしの家計収支 一人暮らしの収支はどうでしょうか。同じく実収入から消費支出+非消費支出を差し引くと、不足額は9,402円です。老後30年で不足する金額は約340万円になる計算です。 (出典:総務省 家計調査報告 2021年(令和3年)平均結果の概要 P20 ) 数字だけ見ると、老後2,000万円必要説は消えてしまったように見受けられます。 しかし、家計収支の不足額が減少したのは、コロナ禍で生活スタイルが変化し外出の機会が減ってしまったことが考えられます。コロナ禍前の消費が戻りつつある今、今後、老後〇〇〇〇円問題が再浮上することも十分考えられます。 老後資金不足になる要因3つ 物理的に支出が収入を上回れば貯蓄を取り崩すなどの対応が必要になり、資金不足となる可能性は高まります。その他、外的要因として資金不足となりうるリスクを3つ解説します。 1.長生きリスク 2021年の日本人の平均寿命は男性が81.47歳、女性は87.57歳でした。厚生労働省のデータによると、2040年には日本人男性の平均寿命は83.27歳、女性で89.63歳となることが予想されています。 (出典:厚生労働省 平均寿命の推移 ) 老後の必要資金を計算するとき、平均寿命や平均余命を使うことは多いですが、もう一つの指標、「死亡年齢最頻値」を使うことがあります。死亡年齢最頻値とは、生存期間の中央値を意味しており、出生数の半分が死亡する年齢のことを示します。 下図にあるように、死亡年齢最頻値は平均寿命より高い数値を示しています。たとえば女性の場合、平均寿命は87.26歳ですが、死亡年齢最頻値は93歳。言い換えれば、女性の半数は93歳まで生存するということです。(令和元年データ) (出典:令和元年9月 内閣官房全世代型社会保障検討室 ) 支出が年金収入を上回ったまま長生きすれば、資金不足のリスクが高まります。死亡年齢最頻値から、老後資金をシミュレーションすることで、より現実的な必要資金が算出できるでしょう。 2.働き方の多様化と退職金の減少 終身雇用が当たり前だった時代は、老後資金として退職金を当てにすることもできました。しかし、昨今、日本人の仕事への意識が変わりつつあること、働き方の多様性が認められるようになったこともあり、終身雇用は形骸化しつつあります。 退職金は基本的に、勤続年数に比例して積み増しされるため、就業年数が短くなれば退職金の金額は少なくなります。60歳や65歳の退職時にまとまった退職金を受け取れない方が今後増えることも予想されます。 3.年金制度への不安 日本の年金制度は元々、高い経済成長率を前提として設計されたものです。数十年にわたり経済成長が停滞している今の日本では、年金制度設立当時の見通しを維持することは困難な状況です。 公的年金の給付水準は、2019年は現役世代の平均賃金の約6割ですが、このまま経済成長をしない想定では、2060年に給付水準は5割を下回る予想がされています。(出典:厚生労働省 第10話 給付水準の将来見通し ) 老後2,000万円問題を乗り切る方法 老後2,000万円問題は、夫が厚生年金保険に40年加入し、妻は専業主婦という平均的な家庭の収支がモデルとなっています。しかし現実は、年金収入額も生活費も千差万別ですので、老後の必要資金を一括りで語ることはできません。 大切なのは、自分の老後の家計はどうなりそうか、をシミュレーションして把握することです。 1.老後のライフプランを作成する まず、老後のライフプランを立てることから始めましょう。そして、保有資産の整理をして年金受給の見込額を把握しておくことが必要です。保有資産と年金収入の金額から老後の必要資金を差し引くことで、大まかな不足額が見えてきます。 2.生活費を見直す 年金収入は、現役時代の給与と比較すれば大幅減となるため、生活費の見直しは必須です。 実は、生活費の削減に貢献してくれるのは、食費などの流動費ではなく固定費です。固定費とは、通信費、水道光熱費、サブスク費用などのことですが、これらを退職のタイミングで見直すことで、継続的な生活費削減につながります。また、退職時に住宅ローンが残っている場合は一括返済なども視野に入れましょう。 逆に、支出が増える可能性があるのは医療費です。老後の生活費には医療・介護費用を見積もることも必要になります。 3.長く働くことを検討する 資産をなるべく減らさないために、無理のない範囲で働いて収入を得ることを検討しましょう。 公的年金を受給しながら働くことも可能です。働きながら受給する「在職老齢年金」の支給停止要件が2022年4月から全年齢で47万円となったことも、高齢者の就業を後押ししています。また、要件によりますが、再就職先で厚生年金保険に再加入すれば、受給年金を増やすこともできます。 4.年金受給の繰り下げを検討する 公的年金の受給は最大75歳まで繰り下げることができます。繰り下げをした月数x0.7%が増額される仕組みです。仮に5年間繰り下げれば年金額は42%増額され、一生増額した年金額が受け取れます。 再就職で現役並みの収入を得られる場合などでは、年金の繰り下げ受給を検討してもよいかもしれません。なお、老齢基礎年金と老齢厚生年金は、どちらか一方のみを繰り下げ受給とすることも可能です。 5.つみたてNISAやiDeCoを活用して資産運用する つみたてNISA やiDeCo は非課税で資産運用ができる制度です。分配金や配当金は再投資されるため複利効果が高く、長期運用するほど資産を増やしやすい仕組みです。 特に、iDeCoでは掛け金が所得から控除できるため現役時代にも節税効果を享受できます。原則60歳までは引き出すことができないため、半強制的な老後資金作りが可能です。 老後資金は一括で準備できなくてもいい 2,000万円問題とは 、退職後、年金収入だけで生活する場合を想定して算出されたものです。しかし、令和4年時点での65歳以上の就業率は51%を超えています。長く収入を得ることができれば、必ずしも老後資金をまとめて準備しなくてもよい場合があります。 老後の必要資金は個々により異なります。50代になったら老後のライフプランを立て、保有資産の棚卸と老後の収入見込みを出してみましょう。その上で資金不足が懸念される場合は、対応策を考えてみましょう。 一般的な数字に惑わされず、個々の状況に照らして老後資金を準備していくことが重要です。 (出典:内閣府 第1章 高齢化の状況 )
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2022/10/18
#税金・節税 #老後資金
不動産投資の節税効果をシミュレーション!サラリーマンの場合は?
サラリーマンの不動産投資で所得税や住民税が節約できる 、と聞いたことはありませんか?不動産投資で本当に節税ができるのか?この記事では、節税効果をシミュレーションしながら解説します。 目次(クリックで項目へジャンプ) サラリーマンの不動産投資で節約できる税金 1.所得税 2.住民税 サラリーマンの不動産投資、節税シミュレーション 経費計上できるもの 租税公課 損害保険料 修繕費、リフォーム費用 管理費 ローンの金利 減価償却費 所得税の節税シミュレーション 経費として支出した金額(年間) 年間収支 所得税の税率と2つの所得モデルからシミュレーション 住民税の節税シミュレーション 節税目的の不動産投資の注意点 節税効果を高める物件選び 主な建築構造の法定耐用年数(住居用) 減価償却期間が終わると節税効果がなくなる サラリーマンの不動産投資の節税効果は事前にシミュレーションを サラリーマンの不動産投資で節約できる税金 まずは、サラリーマンが不動産投資 をした場合に節約できる税金の種類について見ていきましょう。 1.所得税 会社から給与を得ているサラリーマンは毎月の給与から源泉徴収により所得税が差し引かれ、最終的に年末調整により所得税の精算を行っています。 サラリーマンに給与所得以外の収入がある場合、その額が一定額を超えると確定申告して納税をする必要があります。不動産所得もそのひとつです。給与所得と不動産所得は損益を相殺できるため、不動産所得が赤字となった年は、赤字分を給与所得から差し引くことができます。これを損益通算 といいます。 損益通算により課税所得が下がれば、所得税も減額になりますすでに納税済みの所得税は、確定申告することで還付されます。 2.住民税 住民税は前年度の所得額に対して課される税金です。したがって、所得税同様、給与所得と不動産所得との損益通算で課税所得が下がれば、住民税も減額されます。なお、課税所得に変更があっても、住民税は単独で申告する必要はありません。所得税の確定申告をすることで、データが市区町村へ送られるため、自動的に住民税額も修正される仕組みです。 サラリーマンの不動産投資、節税シミュレーション 次に、実際にどれくらいの節税になるのか簡単にシミュレーションしてみましょう。 経費計上できるもの そもそも、不動産所得が赤字にならないと、給与所得と損益通算できないためサラリーマンにとって節税効果はありません。不動産所得は不動産の貸付などの運用により得た総収入金額から必要経費を差し引いて求めます。また、必要経費とは、原則、不動産収入を得るために支出した費用のことを指します。 不動産所得 = 不動産の運用により得た収益 - 必要経費 下記は、経費として認められる主な支出です。 租税公課 不動産取得税、固定資産税など 損害保険料 火災保険料、地震保険料など 修繕費、リフォーム費用 修繕にかかった費用、入居者入れ替え時のリフォーム費用など 管理費 設備の保守・点検、共用部分の清掃など ローンの金利 ローン返済額の利息分 減価償却費 建物、建物付属設備などの固定資産の減価償却費 この減価償却費の計上が節税における大きなポイントとなります。減価償却費は、建物や建物付属設備の耐用年数に応じて、帳簿上に分割して経費計上できるものです。つまり、実際の支出は初年度のみですが、2年目以降にも帳簿上に支出を計上できるのです。減価償却費が大きければ、実際は黒字であっても帳簿上の赤字がつくれます。赤字となれば損益通算によりサラリーマンの課税所得を下げられます。課税所得が下がれば、所得税が減額される という仕組みです。 所得税の節税シミュレーション サラリーマンが投資用マンション1室を購入して、賃貸により収入を得る場合の節税効果をシミュレーションをしてみましょう。 経費として支出した金額(年間)   項目 支出金額 租税公課 8万円 損害保険料 3万円 修繕費・リフォーム費 4万円 ローン金利 20万円 減価償却費 200万円 経費合計(a) 235万円   年間収支   収入 家賃収入 10万円 ✕ 12ヶ月 120万円 支出 ローン返済 60万円 経費合計(a) 235万円 年間収支 ▲175万円 ご覧の通り、帳簿上の不動産所得は175万円の赤字です。しかし、減価償却費として計上している200万円は実際には支出していないお金です。つまり、実際には25万円の利益がでていることになります。 実際は25万円の利益があっても、帳簿上の175万円の赤字は、サラリーマンの給与所得と損益通算することができます。たとえば、課税所得が500万円の方であれば、課税所得は325万円に減額できるのです。 所得税の税率と2つの所得モデルからシミュレーション では、所得税率表に基づき、課税所得が500万円の場合と、325万円の場合との所得税の差額を計算してみましょう。   課税所得額 税率 控除額 195万円未満 5% 0円 195万円以上330万円未満 10% 97,500円 330万円以上695万円未満 20% 427,500円 695万円以上900万円未満 23% 636,000円 900万円以上1,800万円未満 33% 1,536,000円 1,800万円以上4,000万円未満 40% 2,796,000円 4,000万円以上 45% 4,796,000円 (出典:国税庁 所得税の税率 ) 課税所得500万円の所得税 500万円 x 20%(税率) - 42.75万円(控除額) = 57.25万円 課税所得325万円の所得税 325万円 x 10%(税率) - 9.75万円(控除額) = 22.75万円 サラリーマンの場合、年末調整で課税関係が終了していれば、すでに57.25万円を納税していますので、差額の34.5万円(57.25万円-22.75万円)が確定申告をすることで還付されます。所得税は所得が高い方ほど税率が高くなる累進課税方式です。今回のように課税所得が下がることで課税区分が変わると(20%→10%)、さらに節税効果が大きくなります 。 住民税の節税シミュレーション 住民税の税率は、所得税のような累進課税方式ではなく一律10%です。前年の所得に対して住民税が計算されますので、不動産所得との損益通算で課税所得が下がれば、住民税も減額されます。課税所得500万円の住民税額は50万円、課税所得325万円になると住民税額は32.5万円になります。差額17.5万円が節税されたことになります。 なお、住民税は、所得税の確定申告をすることで、付随して調整されるため、住民税だけを別途申告する必要はありません。 節税目的の不動産投資の注意点 次に、節税を目的に不動産投資をする場合の注意点について説明します。 節税効果を高める物件選び サラリーマンが不動産投資により課税所得を下げるためには、帳簿上の赤字をつくること、つまり減価償却費の計上がポイントになることをお伝えしました。その減価償却費は、建物の構造と耐用年数によって決まります。 主な建築構造の法定耐用年数(住居用) 構造 法定耐用年数 木造 22年 木造モルタル 20年 鉄筋鉄骨コンクリート造り 47年 鉄筋コンクリート造り   同じ価格の不動産であれば、新築・築浅物件より、中古・築古物件のほうが1年当たりの減価償却費を大きく取ることができます。たとえば、木造の新築住宅を6,600万円で購入した場合、減価償却費として計上できる金額は1年あたり300万円です(6,600万円÷22年)。 一方、築後10年の木造住宅を同価格で購入した場合、耐用年数は残り12年、減価償却費は550万円です(6,600万円÷12年)。 投資用不動産を将来的にどう扱うのかによって物件の選び方は異なってきます。所得税や住民税を節税するためだけの投資なのか、もしくは不動産を管理運用しながら継続収益を求めるのかによって、投資対象となる不動産の選び方は違ってくるのです。 減価償却期間が終わると節税効果がなくなる 減価償却費を計上している期間は、帳簿上の赤字により節税効果を得られていても、償却を終えてしまうと不動産所得は黒字に転じるため損益通算ができなくなり節税効果は消滅します。本来の不動産投資の位置づけが賃貸収入により収益を得ることだとすると、節税目的だけの不動産投資は出口戦略が難しくなるのは事実でしょう。 節税目的だけの不動産投資は、譲渡のタイミングや譲渡益にかかる税金も考慮しなければならず、一時節税効果を得られても、結果として、損になってしまうこともあります。そう考えると、不動産投資の節税効果は、本来の不動産運用の副産物と考えるのが適切です。 サラリーマンの不動産投資の節税効果は事前にシミュレーションを サラリーマンの不動産投資の節税効果 について解説しました。節税効果は、給与所得の所得税率によっても異なりますし、選ぶ物件や運用方法によっても違います。どの程度の効果が見込めるかはしっかりシミュレーションをすることが重要です。
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2022/09/28
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