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GK-TKスキームとは?特徴やメリットなどを詳しく解説

最終更新日 2023/02/28

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不動産投資ファンドや太陽光発電ファンド など、非上場の事業型ファンド では、「GK-TKスキーム」と呼ばれるスキームがよく利用されます。しかしながら、「GK-TKスキームって何?」「どんなメリットがあるの?」など疑問を持っている方も多いかもしれません。そこでこの記事では、GK-TKスキームとは何か 、また概要や仕組み、メリット、活用事例などについて詳しく解説していきます。
 

GK-TKスキームとは

GK-TKスキームは、非上場ファンド(私募ファンド)でよく利用される投資スキームの1つです。「GK」「TK」は、それぞれ以下の意味があります。
  • GK(合同会社):Godo Kaisha
  • TK(匿名組合):Tokumei Kumiai
上記それぞれの頭文字(ローマ字)を取って「GK-TK」と呼ばれています。

GK(合同会社)とは

GK(合同会社)は、2006年の会社法改正で導入された会社形態です。アメリカで人気のLLC(Limited Liability Company)をモデルとしています。非上場の私募ファンドでは資金調達を目的に作られる「SPC(Special Purpose Company/特別目的会社) 」が必要になりますが、GK-TKスキームにおいて、SPCの役割を果たすのが合同会社です。


合同会社は設立にまつわる費用や時間を抑えられるのが特徴です。さらに決算公告の義務がないなど、設立や維持が比較的容易なことから、SPCとしてよく用いられます。

TK(匿名組合)とは

 TK(匿名組合)とは、当事者の一方が営業者に対して出資を行い、その営業によって生み出された利益を出資者に分配する契約のことを指します。権利や義務の主体として営業者は表に出ますが、出資者は表に出ないため「匿名組合」と呼ばれます。匿名組合(匿名組合契約)のメリットは、以下のとおりです。
  • 有限責任である
  • 匿名で出資できる
  • 分配金を受け取れる
匿名組合は有限責任となるため、自分の出資額以上の責任は負いません。出資した事業・ファンドが失敗したとしても出資額以上の損失がでることはありません。
 

GK-TKスキームの仕組みと特徴

GK-TKスキーム図

GK-TKスキームでは、SPCとして設立した合同会社に不動産を信託受益権の形式で保有させます。信託受益権とは、信託契約の受益者が信託財産から発生する利益を受ける権利のことを指します。


合同会社は、一般社団法人などが出資して設立した後、銀行からの融資や匿名組合からの出資などで資金を調達し、信託受益権を取得して運用します。投資家は出資する際、匿名組合を通して出資を行います。そして事業を通じて合同会社が得た収益は、投資家の出資割合に応じて分配されます。

GK-TKスキームのメリット

匿名組合は法人格を有していないため法人税を支払う義務がなく、投資家により多くの利益を還元できるというメリットがあります。また、匿名組合を通して投資を行うことで投資家が匿名性を保てる点もGK-TKスキームのメリットといえます。


現物不動産への投資をGK-TKスキームで行う場合は、不動産特定共同事業法(不特法) が適用されます。

二重課税の回避

二重課税回避の仕組み

GK-TKスキームは、二重課税の回避策として採用されています。GK-TKスキームでは、事業で生じた利益は合同会社と匿名組合の2つの組織を経て投資家に分配されます。このとき、それぞれの段階で課税されてしまうと、投資家の配当は目減りしてしまうことになります。そこで、「導管性の確保 」が重要になります。導管性とは、投資で発生した収益に対し法人税を回避することで二重課税されないための仕組みを指す言葉です。

二重課税回避の仕組み

GK-TKスキームで用いられる匿名組合は、そもそも「法人」ではないため、法人税の課税を受けることはありません。そしてSPCである合同会社に関しては、「法人税基本通達 第1款 組合事業による損益 14-1-3」に以下のような記述があります。
法人が匿名組合員である場合におけるその匿名組合営業について生じた利益の額又は損失の額については、現実に利益の分配を受け、又は損失の負担をしていない場合であっても、匿名組合契約によりその分配を受け又は負担をすべき部分の金額をその計算期間の末日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入し、法人が営業者である場合における当該法人の当該事業年度の所得金額の計算に当たっては、匿名組合契約により匿名組合員に分配すべき利益の額又は負担させるべき損失の額を損金の額又は益金の額に算入する。(昭55年直法2-15「三十三」、平17年課法2-14「十五」により改正)
参照:国税庁 法人税法基本通達14-1-3(匿名組合契約に係る損益)


匿名組合の営業者に該当する合同会社は、匿名組合契約に基づき、匿名組合員である投資家に支払う配当金を損金算入できることになっています。つまり、合同会社は実質的に課税所得をゼロにすることができる ため、法人税を回避することができます。これにより、最終的に課税されるのは匿名組合から投資家が受け取る配当に関してのみ、ということになり、二重課税の回避になるというわけです。


GK-TKスキームにおける「倒産隔離」とは

GK-TKスキーム(とくに不動産分野など)において、銀行などの金融機関からの借り入れは「ノンリコースローン」と呼ばれるローンが用いられるケースが多く見られます。ノンリコースローンとは、その事業や資産から生じる収益のみを原資として返済を行うローンのことをいいます。逆に言えば、当該事業がうまくいかなくても金融機関は返済請求をしない、というローンです。


しかしながら、このような仕組みは金融機関にとって不利な契約になりかねません。なぜなら、法律上、合同会社は自らの意思で破産手続きを取ることが可能だからです。そのため、出資を受けた合同会社が安易に破産できないよう用いられるのが「倒産隔離」の仕組み です。

倒産隔離の仕組み

合同会社が勝手に破産できないようにするには、合同会社の出資者であり、所有者である一般社団法人がその権限を行使しない(できない)ようにしなければなりません。そこで一般社団法人に出資持分をもたせた上で、その社員として会計士など中立的な第三者を置き、破産宣告をしないよう取り決めをした上で業務を行ってもらいます。


このようにすることで、想定しない破産申し立てや運営をされる可能性を低く抑えられます。


GK-TKスキームはメリットの大きい投資スキーム

GKTKスキームはメリットが多いスキーム

GK-TKスキームの特徴や仕組み について解説してきました。


投資家から見たGK-TKスキームのメリットとして、まず匿名組合を用いることにより匿名性を担保できる点が挙げられます。例えば、特定の事業に出資することが周囲に知られることで競合他社などに経営方針の動向まで探られることにもなるため、特に法人として出資する場合に大きなメリットになり得ます。


また、GK-TKの組み合わせによる二重課税回避の仕組みも見逃せないポイントといえるでしょう。


作業としての投資家の仕事は、お金を出すことがメインになりますが、このように投資スキームの裏側を知ることで、利益を得る仕組みについてより深い理解を得られます。不動産投資ファンドや太陽光発電ファンドなどへの投資を検討する際は、ぜひスキームにも着目してみましょう。

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記事を書いた人 VWCL編集部
『VWCL』は、投資・お金、それらに付随するブロックチェーン等のファイナンシャルテクノロジーに関する情報を提供するメディアです。編集部では、読者のみなさまに広く正しい金融知識を届けるべく、金融・投資初心者の目線に立ったユーザーファーストのメディア運営を目指してまいります。
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