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NFT の5つの問題点。環境問題などの危険性と将来の展望

最終更新日 2023/01/18

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2021年に爆発的な成長を見せたNFT市場。その後、2022年に入ると一時の熱狂は落ち着きを見せたものの、テクノロジー関連ではまだまだ注目度の高い分野といえます。


そんな中で、しばしば聞かれるのが NFT の問題点を指摘する声です。この記事では、環境問題をはじめとするNFTの問題点や「危険」と言われる理由 、そしてその対策や将来の展望について解説していきます。



NFTとは?

NFTとは?
NFT
は、「Non-Fungible Token(ノンファンジブルトークン)」の略で、日本語では「非代替性トークン」と訳されます。NFTは、偽造や改ざんが難しく、かつ情報の透明性を確保できるブロックチェーン の特性を活用することで、通常はコピーが容易なデジタルデータに固有の価値を持たせることができます。


NFTの特徴1.代替不可能性(唯一無二性)

NFTの最大の特徴は、その名の(Non-Fungible/代替不可能な)とおり、「替えが利かない」という性質です。 ブロックチェーン技術を用いたトークンというと、多くの人がまず思い浮かべるのが 仮想通貨(暗号資産) でしょう。仮想通貨は代表的な「Fungible Token(代替性トークン)」です。例えば、誰が所有しているビットコインも価値に違いはありません。


一方のNFTは、各デジタルデータに鑑定書や所有証明書といった識別情報があるため、まったく同じ見た目のデジタルアートでも別の存在として扱われ、固有の資産価値を持たせることができます。


NFTの特徴2.取引可能性

特定の会社・組織による中央集権的な管理ではなく、ブロックチェーンによる非中央集権的に管理されるNFTは、仮想通貨と同じように所有するNFTを自由に取引・移転することが可能です。また、 取引や移転をプラットフォームをまたいでできるのもNFTの特徴 といえます。例えば、ゲームの中で買ったりもらったりしたNFTを、「 OpenSea(オープンシー) 」などの外部NFTマーケットプレイスで販売することが可能です。


NFTの自由な取引を可能にしているのは、「ERC721」「ERC1155」といったNFT発行のための共通規格です。これらの規格によってサービス間に互換性が与えられ、規格に準拠したサービスであれば相互に取引が行えるようになります。


NFTの特徴3.プログラマビリティ

プログラムにより新たな付加価値を与えることが可能な点もNFTの大きな特徴です。代表的なものとしては、2次流通時の手数料や取引数量の制限などが挙げられます。例えば、自分が制作したNFTアート作品を売却したあとでも、流通のたびに販売代金の一部が手数料として作者のもとに入るようにする、といったことが可能になります。


これにより、著作者は作品を売って終わりではなく、売却後に価値やニーズが高まった場合でも相応の報酬を得ることができるようになります。


NFTの5つの問題点~なぜ「危険」と言われる?~

NFTが危険と言われる理由
さまざまな革新的な特徴を持つNFTですが、なぜ巷では「危険」「やめとけ」などと言われることがあるのでしょうか。ここでは、NFTの問題点や「危険」と言われる理由について解説していきます。


NFTの問題点1.盗作・詐欺が横行している

最大の問題点と言えるのが、盗作や詐欺の多さでしょう。NFTはとくにアート分野で大きな話題になっていますが、話題の大きさに比例するように盗作の問題点が指摘されています。NFTと言っても、通常オンラインで表示されているものは画像データに過ぎず、容易にコピーが可能です。そのため、コピーした画像を自分でNFT化して著作者に無断で販売する、といったことも仕組みとしてできてしまいます。


このような著作権関連の問題は2次創作の分野でも起こることがあります。例えば、1次創作者の許諾を得ずに、もとの作品をベースにした模倣作品や加工・改変を施した作品を「自分の作品」として販売するケースです。無許可の2次創作は、NFTアート でも著作権侵害に当たります。


NFTの問題点2.マネーロンダリングの温床になる可能性

反社会的組織などが非合法的に得たお金を、NFT取引の仕組みによってマネーロンダリングされる可能性が指摘されています。


“マネー・ローンダリング(Money Laundering:資金洗浄)とは、一般に、犯罪によって得た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、捜査機関等による収益の発見や検挙等を逃れようとする行為を言います。このような行為を放置すると、犯罪による収益が、将来の犯罪活動や犯罪組織の維持・強化に使用され、組織的な犯罪を助長するとともに、これが移転して事業活動に用いられることにより健全な経済活動に重大な悪影響を与えることから、国民生活の安全と平穏を確保するとともに、経済活動の健全な発展に寄与するため、マネー・ローンダリングを防止することが重要です。”

引用元:警察庁|マネー・ローンダリング対策の沿革


【解説】NFTによるマネーロンダリングの方法とは?

マネーロンダリングの目的は、資金がどこから来たものかを分かりにくくすることです。NFTには、いわゆる「適正価格」が存在せず、取引者同士の合意でのみ価値が決まります。これは極端な話、双方が合意さえすれば、適当な落書きを数十億円で取引することも可能ということです。この自由な取引の仕組みを利用して購入・売却を繰り返すことでマネーロンダリングが可能になるという指摘があります。


現物の美術品を利用したマネーロンダリングは古くから問題視されていましたが、NFTの登場により、さらに容易に行われる可能性も出てきています。


NFTの問題点3.ハッキングのリスク

通常、「OpenSea」などのNFTマーケットプレイスで購入したNFTは、「MetaMask(メタマスク) 」などの、いわゆる「ウォレット」で管理します。こうしたウォレットは、「分散型ウォレット」と呼ばれ、よく銀行口座のような中央集権型ウォレットと対で語られます。


分散型ウォレットは、特定の管理者による一括管理がされていないためハッキングに強いとされていますが、一方で完全自己管理であることによる脆弱性もあります。例えば、秘密キーと呼ばれる「鍵」やパスフレーズを紛失すると、二度と資産にアクセスできなくなることもあります(「パスワードを忘れました!」と問い合わせる窓口がありません)。


また、フィッシング詐欺などにより上記のような情報が流出し、NFTがまるごと盗まれる、といった事件も起きています。


【事例】OpenSeaのフィッシング詐欺事件

「OpenSea」では、2022年2月、利用ユーザーに対するフィッシング詐欺が発生したことを明かしています。

方法はシンプルで、ユーザーのメールアドレスに対して「OpenSea」を名乗った偽のメールを送付し、不正なリンクを踏ませて本来とは異なるコントラクト(契約)に署名させるという手口です。この事件で合計32件のユーザーアカウントから総額300万ドル相当のNFTが不正に流出したとのことです。


NFTの問題点4.法整備の遅れ

新しいテクノロジーであるNFTに関しては、現行の法律で十分にカバーできているとは言い切れない状況です。例えば、よく議論に上がるのが「所有権」についてです。NFTは、それ自体が替えの利かない固有の価値を持つデジタル資産であると同時に、デジタルアートなどの所有権を証明するものでもあります。しかし、現行の民法では所有権は「有体物(動産・不動産)」に対して認められる権利とされています。


“(所有権の内容)
第二百六条 所有者は、法令の制限内において、自由にその所有物の使用、収益及び処分をする権利を有する。

(定義)
第八十五条 この法律において「物」とは、有体物をいう。”

引用元:民法 – e-Gov法令検索


法律上ではNFTは「所有できないもの」であり、その意味でそもそも「売買契約が成立するのか」という部分が法的に不明確 なのです。とはいえ、自ら管理をし、“取引が可能なモノ”であることは確かで、この扱いをどうするかについては法整備がまだまだ進んでいない状況です。


NFTの問題点5.環境負荷の増大

多くのNFTは、イーサリアムプラットフォームで取引されています。イーサリアム は、安定性・信頼性に優れた仮想通貨であり、スマートコントラクトによる安全性の高い取引が可能な点がメリットです。一方で、イーサリアムのマイニング(仮想通貨の取引の際に発生するさまざまなデータを承認する作業のこと)に莫大な電力が必要になることが問題視されています。


従来、イーサリアムは「Proof of Work(プルーフオブワーク/PoW)」というコンセンサスアルゴリズム(合意方法)を採用していました。PoWでは、ブロックチェーンにブロックを追加するためにマイニングが必要になります。マイニングには高度な計算が欠かせず、そのためには専用のマイニング機器が必要で、非常に大きな電力を消費してしまうのです。


環境問題への対策とは?:「PoW」から「PoS」への移行


NFTの問題点に対する将来の展望とは?

NFTの将来
現状、NFTには多くの問題点が存在するのは確かです。NFTがさらなる発展・成長していくには、上記のような問題点の解決策を探っていく必要があるでしょう。そこで、次にNFTの問題点に対する解決策や将来の展望について解説していきます。


1.盗作に対するポリシーの強化

世界最大手のNFTマーケットプレイス「OpenSea」は、NFT最大の課題と言われる盗作問題について、ポリシーの強化に取り組んでいます。

例えば、盗作のNFTと知りながら購入した場合、購入者に罰則が適用される可能性を示唆しています。また、当初のポリシーでは警察の介入はエスカレートした大きな問題に発展した場合でしたが、2022年のポリシー強化で、不正の可能性がある場合に警察への通報がなされるようになりました。

最大手が盗作への監視を強める表明をしたことで、今後の業界全体の意識向上が期待されます。


2次創作を公認するムーブメントも

著作権関連で問題になりがちだった2次創作の分野でも、最近では意識の変化が見られるようになってきました。最近では日本最大のNFTコミュニティ「Crypto Ninja」などで、積極的に2次創作を認めていこうというムーブメントもおこりはじめています。

2.マネーロンダリングへの規制強化の動き

2022年12月2日、日本政府はマネーロンダリングの対策などを強化する「改正犯罪収益移転防止法」を参議院本会議で可決・成立しました。今回可決・成立した6本の改正法の中には、仮想通貨に関するものも含まれます。


“暗号資産の交換を行う事業者に対して、利用者の氏名などの情報を確認し事業者間で通知する義務を課すことで、資金の流れを追跡しやすくします。

通知義務は、法定通貨などに連動させて価格の安定を図る「ステーブルコイン」と呼ばれる仮想通貨の取引業者も対象で違反業者には行政指導などを行い従わない場合は刑事罰を科せるようになります。”

引用元:NHKニュース|マネーロンダリング対策強化へ 法律の改正案 参院で可決・成立


また、NFT分野でもマネーロンダリングの規制強化への機運が高まってきています。2022年9月、米バイデン政権は仮想通貨を含むデジタル資産の規制に関する新しいフレームワークを発表。その際、米政府はマネーロンダリング防止の観点から、対象に仮想通貨やNFTの取引所も含めた上で銀行機密法の改正の要請を検討すると述べました。

参考:Forbes|米政府、マネロン防止の観点でNFTを監視対象とする可能性


3.NFTハッキングへの対抗

NFTのハッキングを防止するには現状、個人の知識やスキルに委ねられていると言わざるを得ません。まさにこの点が「NFTは危険」と言われる最大の理由と言えるでしょう。NFTや仮想通貨に対するリテラシーレベルを高め、正しく運用することが求められています。ハッキングのリスクを下げるには、例えば以下のような対策を行うことが重要です。


  • シードフレーズや秘密鍵を厳重に管理する/絶対に教えない
  • TwitterやDiscordなどのDMへのNFT関連の告知・勧誘に乗らない
  • よく知らない相手からのメールのリンクを踏まない(URLを慎重に確認する)
  • 公共のフリーWi-Fiを使わない
  • ウォレットを分ける(資産を分散する)


4.NFTの扱いに関する法整備

NFTの法的な扱いは、所有権においては民法、著作権においては著作権法、取引や資金移動においては金融商品取引法や資金決済法、さらにゲーム等でNFTにが配布されるケースにおいては景品表示法が関わってくるなど、広範囲にわたります。


現在は、現行の法律をもとに事例の扱いを解釈して当てはめる、ということを行いますが、今後どのように法整備が進むかは2022年現在では不透明な状況です。とはいえ、2017年4月に施行された仮想通貨法を皮切りに、仮想通貨に関する法律は整備が進んでいます。今後、NFTに関する法整備も進んでいく可能性は十分にあるでしょう。


5.「PoW」から「PoS」への移行

従来のアルゴリズムである「Proof of Work」は、マイニングによってデータの承認作業を行い、その作業を行ったマイナーに報酬を付与する仕組みです。しかし、その環境負荷の大きさから、批判の的にもなっていました。そこで登場したのが「Proof of Stake(プルーフオブステーク/PoS)」です。これは、「作業(ワーク)」ではなく「保有(ステーク)」によって取引を承認するアルゴリズムで、仮想通貨の保有量や保有期間に応じて承認作業の報酬が決まります。


イーサリアム財団によると、「イーサリアム2.0」で「PoS」へ移行することにより、消費電力を99.95%削減できる可能性があるとのこと。環境負荷への影響軽減へ向けて期待が高まっています。

参考:Ethereum’s energy usage will soon decrease by ~99.95%(英語サイト)


NFTを楽しむために、問題点も理解しておこう

NFTを楽しもう
環境問題をはじめとするNFTの問題点、「危険」と言われる理由 、そしてその対策や将来の展望について解説してきました。NFTは短期間で爆発的に人気や知名度が高まったこともあり、それに反対するように懐疑的な意見が出ているのも確かです。その意見の多くは「よく分からないなら手を出すべきではない」というものです。


逆に言えば、「NFTを楽しみたいなら、リスクもきちんと知っておくべき」ということでもあります。新しく現れた仕組みで「儲かるらしい」という話まで出てくれば、つい手を出したくなってしまうものですが、その前に正しい知識を持つこと、危険性を理解しておくことが肝要です。

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記事を書いた人 VWCL編集部
『VWCL』は、投資・お金、それらに付随するブロックチェーン等のファイナンシャルテクノロジーに関する情報を提供するメディアです。編集部では、読者のみなさまに広く正しい金融知識を届けるべく、金融・投資初心者の目線に立ったユーザーファーストのメディア運営を目指してまいります。
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