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新NISAとは?2024年から始まる新制度のポイントを分かりやすく解説
そこで今回は、現行のNISA制度についておさらいしつつ、新NISA制度 について詳しく解説します。NISA制度の変更についていち早く理解し、安心して資産運用を継続しましょう。
そもそもNISAとはどんな制度?【一般NISA・つみたてNISA】
NISA制度とは、個人投資家のための「少額投資非課税制度」のことです。通常、株式や投資信託などの運用益に対しては、税金が20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)がかかります。しかし、NISA制度を利用すると運用益にかかる税金のすべてが非課税になります。
NISA制度は大きく分けて、一般NISA 、つみたてNISA の二種類があります。一般NISAであれば、最長で5年、年間投資枠120万円以内であれば運用益が非課税になります。一方、つみたてNISAであれば、最長で20年、年間投資枠40万円以内であれば運用益が非課税になります。
なお、一般NISAとつみたてNISAは、いずれか1つしか利用できないという制約があります。
2024年から始まる「新NISA制度」とは
新NISAは、現行の一般NISAとつみたてNISAを組み合わせた上で、さらにブラッシュアップしたような形になることが予定されています。それでは、次項で詳しく変更ポイントを確認していきましょう。
新NISA制度のポイント5つ
ここでは、現行のNISAから新NISAへの変更において、押さえておきたい5つの変更ポイントを解説します。- NISA制度が「恒久化」する
- 非課税保有期間が無期限化する
- 成長投資・つみたて投資が併用可能になる
- 年間の投資上限額が大幅に引き上げられる
- 1,800万円の生涯投資枠が新たに設けられる
それでは以下で詳しく見ていきましょう。
ポイント1. NISA制度が「恒久化」する
NISA制度の改正において、もっとも注目したいのが制度の恒久化です。現行の制度では、一般NISAが2023年、つみたてNISAが2042年まで(新規買い付けは2023年まで)の期限が設けられていました。安定的に資産運用するには「長期・分散・積立」が重要です。しかし、現行のNISA制度には期限が設けられていることから、長期的な目線での投資が難しいという欠点がありました。そのため今回のNISA恒久化により、さらに投資に取り組みやすい環境へと変わるでしょう。
ポイント2. 非課税保有期間が無期限化する
現行の制度では、一般NISAは最長5年、つみたてNISAが最長20年の「非課税保有期間」が設けられていました。しかし、新NISAへの改正によって、これらの非課税保有期間が撤廃されます。つまりNISA口座で投資を行えば、今後は投資上限額内であれば、ずっと非課税で資産運用ができるということです。非課税分の約20%も投資に回せば、より複利効果を得ながら効率的な資産運用ができます。ポイント3. 成長投資とつみたて投資が併用可能になる
新NISAには、新たに「成長投資」と「つみたて投資枠」が設けられます。成長投資枠は現行の一般NISA制度にあたり、「つみたて投資枠」は現行のつみたてNISAにあたります。現行の制度では、一般NISAとつみたてNISAの併用は原則できませんでしたが、今回の新NISA制度への改正では両枠の併用が可能になります。ポイント4. 年間の投資上限額が大幅に引き上げられる
現行の制度では一般NISAは120万円、つみたてNISAは毎年40万円でした。改正後のNISAでは成長投資枠は2倍の240万円に、つみたて投資枠は3倍の120万円に増え、合計で360万円に拡大されます。先述のとおり、両枠の併用も可能になるため、「毎月積み立てながら、ボーナスが入ったときにはスポットでまとめて投資する」といった使い方もできるようになります。利便性がぐっと高まると言えるでしょう。ポイント5. 1,800万円の生涯投資枠が新たに設けられる
現行の一般NISA・つみたてNISAでは、投資枠の再利用ができませんでした。しかし、新NISAでは投資枠が再利用できるようになります。投資枠の再利用とはどういうことか、現行の一般NISAを例に説明します。- 2023年1月に、株式を30万円で購入。残りの投資枠は90万円。
- 2023年3月に、投資信託を50万円で購入。残りの投資枠は40万円。
- 2023年6月に、1月に買った30万円分の株式を売却。残りの投資枠は40万円(売却した30万円分の株式の枠は再利用できず、投資枠は70万円には戻らない)。
上記のように従来は、買った商品をその年の内に売却したとしても、その分の残りの投資枠が戻るわけではありませんでした。しかし、改正後は成長投資枠とつみたて投資枠を合わせて1,800万円の範囲内であれば、枠の再利用が可能になります。
現行のNISAから新NISAへの変更点の比較
現行のNISA制度と新NISA制度、それぞれの特徴と変更点を以下の表にまとめました。
現行のNISA制度 | 新しいNISA制度 | |||
一般NISA | つみたてNISA | 成長投資枠 | つみたて投資枠 | |
両枠の併用 | できない | できる | ||
年間の非課税枠 | 120万円 | 40万円 | 240万円 | 120万円 |
非課税保有できる期間 | 最長5年 | 最長20年 | 無期限 | 無期限 |
非課税で保有できる総額 | 600万円(120万円×5年) | 800万円(40万円×20年) | 1,800万円(うち成長投資枠1,200万円) | |
枠の再利用 | できない | できる(総額1,800万円まで) | ||
投資可能期間 | 2023年まで | 2042年まで | 2024年から無期限 | |
購入できる商品 | 株式・投資信託 | 投資信託 | 株式・投資信託 | 投資信託 |
なぜ「NISA制度」は改正されるのか
岸田政権は「資産所得倍増プラン」を掲げています。NISA制度の改正はこのプランを実現するためです。NISA制度をよりシンプルで分かりやすく、使い勝手をよくして、国民に投資を促す目的です。岸田政権の資産倍増プラン案
によれば、「日本国内の家計金融資産 2,000 兆円は、半分以上がリターンの少ない現預金で保有されている」そして「この20年間で家計の金融資産は米国で約3.4倍、英国で2.3倍になったが、日本は1.4倍にとどまっている」そうです。
そのため、状況を打破するために「貯蓄から投資へ」の流れを加速すると表明しました。
投資は資産運用としての役割だけではなく、株式や投資信託の購入を通じて企業を応援することにもつながります。資金を得た企業は、利益をより効率的にあげやすくなって業績が上がり、従業員の給与にも反映されるかもしれません。従業員の給与が増えれば家計が潤い、消費・さらなる投資が活発になります。政府はこうした好循環を狙っているものと考えられます。
新NISAに切り替わるまで、NISAを始めるのを待つべき?
今回は、新NISA制度 について、現行のNISAとの比較や変更点などを詳しく解説してきました。NISA制度の刷新により、投資の王道である「長期・分散・積立」をより実践しやすい形式に変わると言えるでしょう。長期で投資を行うには、投資を早く始めることが大切です。一般NISAは2023年に終了してしまいますが、つみたてNISAなら2042年まで利用できます。
NISA制度の利用を検討している方は、改正を待たずに今のうちから始めて、少しでも将来の資産形成に役立てるのがおすすめです。
(※本記事は、2023年2月14日時点の情報をもとに執筆しています)